159.狩人は賞賛のために動かず
ガンマの妹フェリサは、肉弾のフンコロと戦い、見事勝利を収めた。
『姐さん! やったな……!』
ぱたりと倒れたフェリサの顔の上に、妖精のリコリスが乗っかる。
『ほんまあんたはすごいで!』
……すごい、だろうか。
ちらとフェリサは周りを見渡す。
フンコロとのたたかいで、だいぶ街を傷つけてしまった。
これでは……狩人失格だ。
『そないことあらへんと思うけどなぁ』
心を読めるリコリスがそういう。
いや……でも、フェリサは知っているのだ。本物、狩人を。
――狩人は賞賛のために動かず、森羅万象の一つとなり、黙して機を待つ。
『なんやそれ?』
スナイプの一族に伝わる、狩人の極意だ。
真の狩人は、被害を出すことなく、身を隠して獲物を狩るものだ。
自分のこれでは……駄目だ。
兄のように、スマートに敵を狩ることができなかった。
兄だったら、きっとこんなに被害を出さずに勝てただろう。
『まあええやんか。ほれ、みてみ?』
リコリスが指さす先には、街の住民たちがいた。
「ありがとう! 軍人さん!」「守ってくれてありがとー!」「ありがとー!」
……みな、フェリサにお礼を言っていた。
狩人とは賞賛のために動かず……。
今までその言葉通り、フェリサは人外魔境の土地で獲物を狩っていた。
はじめて、こうして人から褒められた。
うれしかった……。
『ええやんな、ほら、姐さん今は狩人やあらへんのやから』
そうだった。
今自分は、狩人ではなく軍人なのだ。
自分の役割は獣を狩るのではなく、人の平穏を乱す敵を排除すること。
それができたのなら……。
リコリスの言う通り、まあ、これでいいのかもしれない。
……ありがとう、とフェリサは心の中でつぶやく。
落ち込んでいる自分を励ましてくれた、妖精に。
それに、街の人に被害が出ないよう、魔法の結界を張ってくれていたのも、リコリスだ。
『どういたしましてや!』
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