156.真なる球体
ガンマの妹フェリサは、魔蟲族のひとり肉弾のフンコロと戦っている。
敵の攻撃により、武器である手斧を失った。
『いったいなんや……相手は何してきてんのや!』
フェリサの頭上に座る妖精リコリスが、額に汗を垂らしながら言う。
『ふぇふぇ……それを問われて素直に答える訳がないでしょお……』
フンコロが体を丸くし、突っ込んでくる。
『なんやただの突進……いや、ちがう! フェリサ姐さん! アレに触れたらあかんっ!』
フェリサも感じていた。
敵のもつ、異様なプレッシャーを。
フェリサはフンコロの攻撃をギリギリで避ける。
だが……。
ボッ……!
「!?」
完全に攻撃を避けきれず、利き手じゃ無い左手が、フンコロに触れた。
その瞬間、左手が消し飛んだのである。
『姐さん……!』
何が起きたのかわからない。
ただ、敵に触れた瞬間に、その箇所がえぐり取られた。
さっきの手斧のときと同じだ。
敵は何か結界を使うのか?
それとも消し飛ばす能力か。
魔法か。
「…………」
狩人にとって一番恐い物、それは……未知。
わからないことが最も恐い。
狩人としてのフェリサが、逃げろとささやく。
だが……フェリサは逃げなかった。
逃げることで、より多くの被害を生むと思ったからだ。
『よく逃げなかったな、フェリサ!』
「!」
兄の声が近くから聞こえた。
耳につけてるイヤーカフから、兄の……ガンマの声がする。
『すまん、こっちも戦闘中だから手短に話す。敵の正体について』
兄はどうやら、自分の戦闘をしつつも、フェリサのことも気にかけてくれていたらしい。
ああ……なんて優しいんだ、本当に……兄は優しくて、だから、大好きだ。
『敵は、真球だ』
『しんきゅう……なんやねん、兄さん?』
フェリサも聞いたことがない単語だった。
『ぼくが説明しましょ~』
次に聞こえてきたのは、胡桃隊に派遣されてきた科学者、リヒターの声だ。
『ガンマ君が見た敵の情報によりますとぉ、敵は完全なる球体の形をしてますぅ。これは真球といって、接地面がゼロの球体のことを言うんですぅ』
難しすぎて、何を言ってるかさっぱりだった……。
『接地面がゼロなら、無限の圧力を産む。あー……なんというか、敵は完全な球体で、触れることができないんですよぉ』
触れることができない……。
なるほど、だから、部位が欠損したわけだ。
『触れることができない球体を、どない攻略せいっちゅーんですか!』
リコリスが叫ぶ。
だが……フェリサはニヤリと笑っていた。
兄と、仲間のおかげで敵の正体については知れた。
敵は正体不明じゃ無くなったのだ。
フェリサの顔つきが変わる。
得物を狩る、狩人の顔へと。
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