151.冷酷なる剣士
《シャーロットSide》
帝国を魔蟲族に襲撃されている。
同盟国であるはずの、神聖皇国の裏切りにあい、帝都は大混乱を起こしていた。
胡桃隊の副隊長、シャーロットは、皇国の聖女シャンテ(リューウェンの相棒)とともに、戦闘を繰り広げている。
「はんっ! あたいのタネが割れただって!?」
シャンテは炎の虎の姿で、シャーロットの前に立っている。
彼女の体からは感情の高ぶりに呼応するように、ぼうぼうと炎が燃え上げる。
一方で氷の双剣をシャーロットは構えながら、その恐ろしい化け物をまえに平静を保っている。
「どこまでそのムカつく顔が保てるかな!」
ボッ……! とまたシャンテが消える。 シャーロットは動かない。
だが……。
ザシュッ……!
「な、なにぃい!?」
彼女の右斜めうしろに、炎の虎が出現してる。
彼女の体を……。
地面から生えた、氷柱が貫いていた。
「ば、馬鹿な……!? 目で追えるわけが……」
「あなたが消えたのは、時間停止といった特別な力ではありません。ただの、超加速です」
シャーロットの剣が地面に突き刺さっている。
そこから氷柱が伸びていた。
「氷剣技……【氷柱演舞】」
彼女の氷の力を、地面に伝播させて、離れた場所に氷柱を出現させる剣技だ。
シャーロットが続ける。
「あなたはその体から炎を勢いよく拭きだし、その推進力で高速移動していただけです」
「ば、ばかな……じゃあどうして目で追えたんだ!? あたいが後ろから襲いかかるとどうしてわかる!?」
「チャフです」
「はぁ……!? チャフ……!?」
よく見ると、シャーロットの周囲に、白い煙が漂っていた。
「周囲に微細な氷をただよわせました。あなたを目で追えなくても、この煙の動きが、気流をうみ、それを読むことで先を読みました」
「なんだ……と……」
ぱき……ぱきき……と徐々にシャンテの体が凍っていく。
氷柱を通して、シャンテの熱が奪われていく。
やがて彼女は氷の柱に閉じ込められ、身動きひとつできなくなった。
シャーロットは息をついて、氷の剣を解除する。
「……ふぅ」
こうしてシャーロットは敵の捕縛に成功したのだった。




