146.策
帝国にて。
オスカーは魔蟲族、幻惑のモルフィンとの一騎打ちをしている。
……だが、実際には違う。
「(ガンマ……我が友よ。大変だろうに、ボクのサポートまでしてくれるなんて……!)」
オスカーの隣には、魔法で作られた蜻蛉が飛んでいる。
これはガンマのついさっき放った魔法矢だ。
蜻蛉の矢。
自動追跡用の魔法矢である。
それは、本来の使い方だ。
「くそ!」
モルフィンが悪態をつきながら、こりもせず、分身を見せてくる。
よほど幻術に自身があるのだろう。
だが……今のオスカーには、ガンマの目がある。
この蜻蛉の矢、ガンマと視界をリンクしている。
つまりこの魔法蜻蛉の目は、ガンマの目がくっついてると同義。
蜻蛉の矢は、見抜いてるのだ。
分身の中の、どれが本物か。
常人では見分けがつかない。
でも人間を超越する視力を持つ、ガンマなら……わかるのだ。
そして蜻蛉の矢は教えてくれる。
くんっ、と顔を向けることで。
右後ろから襲ってくるのが、本体!
オスカーは振り向くこと無く、銃口を、蜻蛉と同じ方へ向ける。
どどぅ……!
「ぎぃやあああああああああああああああああああ!!!!!」
放たれた銃弾が敵の顔面を吹き飛ばした。
「なぜぇええ……なんでぇえええええ……」
倒れ伏すモルフィンに、オスカーは銃口を向けながら言う。
「我らがエースを、侮った。それが敗因だよ。ま、1対1に人の手を借りるのは、騎士道に反するけど……許してくれよ」
オスカーは対魔蟲用の銃弾を、倒れているモルフィンに浴びせる。
敵は蜂の巣になって……やがて、息絶えた。
どさ……とオスカーもまたその場に倒れ伏す。
「ありがとう……我が友。君のおかげで……勝つことができた」
だが、同時に悔しい思いをする。
「君ばかりに負担をかけてしまって……すまない。いつかきっと、君に並ぶ……強い軍人になる」
そう、決意を口にするのだった。