143.諦めない
ガンマがヴィクターと戦う一方、同じ隊のオスカーもまた、護衛軍の魔蟲族との戦闘を繰り広げていた。
「くっ……! どれが本物なのかね!」
オスカーは銃を使って、敵を狙撃する。
しかし敵は幻術使い。
一〇人に分身しており、どれが本体なのかまったくわからない状況だ。
銃弾を撃ち込んでもダメージを与えられない……。
それどころか。
「ガッ!」
「おやまあ、どこをむいてるのかしらね」
敵は攻撃を当て放題なのだ。
モルフィンは鉄扇でオスカーの体力を削っていく。
一方でオスカーは自分の攻撃を当てられない状態がずっと続く。
(幻術使い……これほどまでに、ガンマの力が必要って思ったことはないね)
あの脅威の目を持つガンマならば、幻術すら見破ることは可能だろう。
しかし彼は今、強敵とサシで戦っている最中だ。
援護は期待してはいけないだろう。
ならば持ちうるカードで対処するしかない。
(とはいえ幻術を見破る術はない。このままではじり貧だね……)
オスカーは銃で攻撃をしながら、打破する方策を考える。
しかし敵の攻撃が休むこと無く襲ってくるため、なかなか集中して考えられない。
「ぐあぁ……!」
ももを深く切られて、オスカーは膝をつく。
ぜえはあ……と激しく呼吸しながら、敵をにらみつける。
「まだそんな目をしてられるの? どうして?」
「フッ……そんなの決まってるだろう?」
ガンマやメイベルたちを思い浮かべながら言う。
「仲間達が諦めず、人のために戦っているのだ。僕も諦めるわけにはいかないのだよ……!」




