141.虫籠のなかの人
ガンマがヴィクターと抗戦する、一方。
帝都では魔蟲、および魔蟲族による襲撃を受けていた。
当然、帝都民たちは恐怖し、街から逃げようとするも……。
「出られないわ!!」「どうなってんだ!」「出して! 出してくれぇええ!」
そんな様子を、胡桃隊の隊員、オスカーは焦りながら見ていた。
「くっ! 結界か……! 僕らを閉じ込めるって魂胆かね!?」
オスカーは帝都の端までやってくる。
赤黒い光が帝都を包んでいる。
オスカーから見たら、巨大なそり立つ壁に見える。
しかし頭上も同じく、赤黒い結界に包まれている……。
「ガンマ、状況を教えてくれたまえ」
だが、ガンマからの魔道具を介した通信は入らない。
おそらく、話してる余裕が無いのだろうと思われた。
「状況を把握できない。さっきメイベルが連れ去れたっていうし……」
敵の急襲によって、連携が取れないでいる。
しかし軍人としての責務は果たさねばならない。
「謎の壁の分析……は僕の領分じゃ無いね」
「そのとおりですよぉ」
「うぉ! り、リヒター隊長! 居たのかね?」
白衣を着た、ひょろ長い体躯の女、リヒター・ジョカリ。
科学者である彼女が、オスカーに接触してきたのだ。
「隊長、この光の壁は一体なんなのかね?」
「おそらくは結界ですねぇ」
「結界……」
「はい。ガンマ君の蜻蛉の矢の映像から察するに、我らを帝都に閉じ込める……ま、檻のようなものですよぉ」
魔蟲族たちに、してやられたということだ。
檻にとじこめられ、中に蟲を放つ。
「分析はワタシに任せて、あなたは蟲どもの殲滅をお願いしますねぇ」
「了解だよ!」
リヒターと別れて、オスカーは銃を手に走り出す。
近くに居た蟲どもを、銃弾でぶち抜いた。
そのときである。
「邪魔しないでほしいねえ」
「誰だ!?」