128.始まり
俺は軍服に着替える。
今日は生誕祭。
皇帝陛下の誕生日を祝うため、たくさんの要人が帝都へとやってくる。
今日は、いつも以上に気合いを入れて任務に挑まないといけない。
「……はぁ」
「…………?」
俺の部屋に、妹のフェリサがやってきている。
朝練を終えて部屋に戻ると、俺のベッドを占領していたのだ。
いつも薄着の彼女が、この日はしっかりと軍服に身を通していた。
灰色の軍服だ。
どうしたの、と目で訴えてくる。
彼女は耳がいいため、あまり声を出さないのだ。
「いや、生誕祭……大丈夫かなって」
「…………」むふー。
俺なら大丈夫、って言いたいみたいだ。俺は目が良いので、表情からある程度感情が読み取れる。特に、長年一緒の妹の表情は、手に取るようにわかる。
「いや、気にしてるのは、仕事じゃなくてメイベルのことでさ」
「…………?」
なんですと、と意外そうに目を丸くするフェリサ。
「今メイベルとけんかしててさ」
「…………」ほぅ。
詳しく聞かせて欲しいらしく、ベッドから降りて近づいてきた。
目がキラキラ輝いてる。恋愛ごとに興味を出す年頃になったのか。
「ませたなおまえ」
「…………」えへへ。
何が嬉しいのだろうか。
「…………」くいくい。
言ってみ? とばかりに、フェリサが自分を指さす。
……妹にまで気にされちゃ、な。兄としてさすがにそれはね。
弱い部分をあんまり妹には見せたくないのだ。お兄ちゃんだからな、俺は。
「大丈夫だって。きにしてくれてありがとう」
「…………」むー。
あれ、フェリサが不満そうだ。気を遣ったのがまずかったか?
「すねるなって。ほら、飯食って任務にいくぞ」
「…………」ぬー。