110.汚部屋
リューウェンとの模擬戦を終えたその日の夜。
俺はリヒター隊長のラボへと向かっていた。
リヒター隊長は今は俺たち胡桃隊に力を貸しているものの、本当は別の蜜柑隊って部隊の所属である。
部隊の詰め所は帝城内に存在する。
地下にある胡桃隊の詰め所と違い、帝城内部の片隅に、蜜柑隊のラボがあった……のだが。
「なんだ、こりゃ……」
ラボというのだから、さぞいろんなすごそうな計器があるのだろうと思った。
だが実際は書類だの衣服など、いろんなものが雑多にうち捨てられてる……。
「汚部屋だ……」
「あー、ガンマ君! ごめんなさいねぇ~」
部屋の奥からリヒター隊長が顔をのぞかせた。
桃色の長い髪を無造作に束ねた、身長の高い女の人である。
「ちょっと散らかってるけど、さ、入ってくださぃ~」
「ちょっと……」
これがちょっとなのだろうか。俺の感覚ではだいぶなのだが……。
「ええと、座布団どこいきましたかねぇ~。あれぇ~?」
物の山を崩して、捜し物をしている。その都度雪崩がおきたり、床に新たな小山が新設されたりする。
「あ、あの……座布団は、これじゃないですか?」
俺は眼がいいので、捜し物とか得意なのだ。落ちてる座布団をさがしあてて、それをひっぱりだす。
「おお、さすが眼がいいですねぇ」
褒められてもあんまりうれしくない。
それより……きになる。非常に、きになる。
「はあ……あの、片付けても、いいですか?」
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