107．気の流れ
リューウェンとの手合わせ。
俺は死角から一撃を放った。避けられるはずがない一撃だった。
でも……やつはそれを払ってきたのだ。
「目がいい、ってわけじゃないな」
「然り。拙僧はただ、気の流れを読んだだけでござるよ」
……あっさりと手のうちをさらすリューウェンに、俺は警戒心を強める。
常人では考えられないうごき、技術。
それをあっさりと、自分の口から吐いたのだ。それは本来ありえない行動だ。狩りを行う俺たち狩人からしたら、獲物にそんな手の内を明かすなんて馬鹿なことはしない。
するとリューウェンが慌てて首を振る。
「別に深い意図はござらん。これはただの手合わせ、お互いの研鑽のためにやってることである。ゆえに、相手が知らないことは教えるべきだと判断したまででござる」
……リューウェンの顔色が変わっていない。嘘ではない、と思う。
まあこれから一緒に警備任務につくんだし、相手は神聖皇国っていうでかいとこの聖騎士だ。裏切りなんて絶対にありえないか。警戒レベルを下げよう。
「気の流れを読むって、具体的には？」
「卓越した武人は無意識に闘気と呼ばれるものをまとっているのでござるよ」
「闘気……？ なんだそれは？」
「うーん……説明が難しいの。こう……自然の力を体に取り込むというか……まあ、実感してもらった方がよいかな」
すぅ……とリューウェンが構えを変える。
その瞬間……。
ぞくり！ 俺の背筋に悪寒が走る。今までのやつとは、明らかに違う空気をまとっているのがわかった。
「おお！ 闘気を習してなくて、これを肌で感じるとは！ よほど腕の立つ武人なのでござるなぁ」
……笑いながら、なんてこと無いようにいうリューウェン。
だが、な、なんだ。
見えない。けど……やつは、何かをまとっている。それは俺に、危険だと知らせるほどの代物だ。いったいやつは……何をしてる？
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