104.手合わせ
帝国軍と神聖皇国の聖騎士たちとで、合同訓練をしている。
リューウェンのおっさんから、模擬戦の申し出があった。
「…………」
何を考えてるんだ? こいつ。
俺と戦って何の意味があるんだ? 大体今は訓練中なんだが。
「警戒させてしまったらすまない! ただ、拙僧は君の強さを知りたいのだ」
「いや……俺そんな強くないですし」
「カカ! ご謙遜を」
す……と目を細めてリューウェンが言う。
「確かにおぬしは力をあまり誇示しないタイプと見受けられる。だが拙僧は感じるのだ。おぬしが鍛え、磨き、身にまとっているオーラの鋭さを」
……オーラとか言われてもわからん。
だが確かに、力をセーブしているのは確かだ。
リヒター隊長からも本気を出さないよう釘を刺され、故郷でもらった弓を使うことを禁じられている。まあ、だいたい狩りにパワーなんて必要ないから別にいいのだが。
「お頼み申す、是非」
これはちょっとやそっとじゃ引いてくれそうにないな。
力を見せつけるのは嫌いなんだが……。
「いいじゃねえかガンマ。戦ってやんな」
「隊長……」
マリク隊長がにかっと笑う。
「こっちも神聖皇国の聖騎士、しかも13使徒がどんだけやんのか、教えてもらうじゃあねえか、な?」
……確かに味方となる人間の強さは正確に把握しておきたい。
ともに戦うにしろ……。……後ろから、刺されるにしろ。
最悪を考えすぎか……でも、後で後悔するよりは良いと思っている。
「わかった。こちらこそよろしくお願いします」
こうして俺はリューウェンと模擬戦をすることになったのだった。
 




