100.バディ
「リューウェン!」
山猫のような女ミーシャが突如現れた大男……神聖皇国の聖騎士、リューウェンに反応する。
迷子になっていたミーシャは、リューウェンに対して……。
「どこほっつき歩いてやがった! 勝手に迷子になってー!」
……と、理不尽な怒りをリューウェンにぶつける。まるで自分に非が全くないような振る舞いに、戸惑ってしまう。
迷子になったのはあんたじゃないのか……?
リューウェンはしかしそんな扱いにも慣れてるかのようで、「すまんすまん」と頭をかきながら近づいてくる。
「ぬしを見失った拙僧の落ち度だ。それは謝ろう」
「だろ?」
「しかしその方を攻撃するのは間違ってるのでござる。彼はあなたを探すのを手伝ってくれた、恩人でござる」
「へん! あたしは別に頼んでねーっつの」
「それでも、だ。善良なる一般人に、ぬしの力を使うのは間違ってる。それは、邪悪を払うために創造主が与えてくれた力であろう?」
やはりミーシャは何か特別な攻撃をしようとしてたんだな。
空気から、そう察していた。俺も、そして妹のフェリサも。
だから武器を構えて、今にもフェリサが斬りかかろうとしていたんだ。
俺はフェリサの手を掴んで止めていたけども。
ミーシャがリューウェンの説得に耳を貸すとは、思えなかった。だいぶワガママ放題やってたからな。
しかし……。
「ったよ」
意外にも、ミーシャは怒気を収めた。さっきまでひりつくような殺気を飛ばしていたのに、すっ……と納めたのである。
リューウェンを信頼してるからか、あるいは、創造主とやらが関わっているのか。
いずれにしろ、ここで一戦交えるようなことにならずにすんでよかった。これから一緒に護衛する仲間に、弓は引きたくない。ましてや、相手は女だからな。