1.Sランク冒険者パーティからの追放
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俺の名前はガンマ・スナイプ。
Sランク冒険者パーティ【黄昏の竜】に所属する弓使いだ。
俺は元々、人外魔境という荒野に住む狩人の末裔だ。
幼い頃からじいちゃんや友達と一緒に、荒野をうろつく鳥類や竜を狩って生きていた。
そんな田舎者の俺はある日、【アイン王立学園】と呼ばれる、王都にある学園の偉い人、学園長からスカウトを受けた。
狩人としての才能を評価され、俺は王立学園に入学することになった。それから6年後。18歳になった俺は、学園の卒業生たちとともに冒険者となった。
メンバーは俺を含めて五人。
魔法剣士のイジワルーをはじめ、戦士、魔法使い、僧侶、そして弓使いの俺。
こいつらは冒険者実習の時から一緒にパーティを組んでいる。実習では常にトップを取れていた。全員が各方面のエキスパートだからな。
俺は卒業後、特にやることもなかったのでイジワルーたちとパーティを組むことにした。
学園長の推薦状があり、最初からCランク冒険者としてスタートできたし、そこからみるみるうちに出世し、今では世界で数えるほどしかいない、Sランク冒険者パーティになれたのだ。
したいことは特になかったけど、金が入るのはうれしかった。故郷には俺に弓を教えてくれたじいちゃんと、そして幼い妹がいる。
妹は生まれつき体が弱い。彼女の体を治す薬は未だに見つからない。延命のための薬を取り寄せるためにも、莫大な金がかかる。なにせ妹の住んでいる土地はドがつくほどの田舎町で、人が入ってこれないほど過酷な場所だからな。
彼女の延命のため、俺は必死になってSランク冒険者パーティとして活躍した。たとえ、どんな扱いを受けようとな……。
★
「ガンマ。おまえクビ。さっさと出てけ」
それはモンスター討伐を終えて、王都に戻ってきた夜。
宿屋の一室にて、俺はリーダーのイジワルーに呼び出されていた。
「は……? クビ……?」
「そうだ、ガンマ。おまえクビ。はいさいなら」
しっし、とまるで野犬でも追い払うかのように、俺に手を振るイジワルー。
「ちょ、ちょっと待て。待ってくれ!」
「んだよガンマ」
「理由を! 理由を教えてくれイジワルー! 俺がどうしてクビにならないといけないんだ」
俺には幼い妹の治療費を稼ぐ、という目的がある。高額の費用がかかるのだ。ここでSランクパーティを出て行くわけにはいかない。
するとイジワルーはうんざりした表情で、吐き捨てるようにいう。
「おまえが、パーティで何にもしてねえからだよ」
「……………………は? 何もしてない、だと……?」
「そうだろ。だっておまえ、パーティの後ろからついてくるだけで、なーんもしてねえじゃん。なぁ?」
そんな馬鹿な……。
いいやでも、イジワルーは冗談で言ってるとは思えない。それに、仲間たちが、イジワルーに続くようにうなずいてる。
嘘だろ……? なんで……?
「弓を持ってただぶらぶら後ろからついてくるだけじゃんかおまえ」
「ち、違う。あれは! 【鳳の矢】っていう特殊な魔法矢を使ってるんだ!」
俺、ガンマ・スナイプの主な得物は、弓だ。
魔法矢。それは魔力で作られ、特殊な効果を発揮する矢のこと。
俺はこの魔法矢を使って様々なことができる。あり得ないほど遠くの敵を射貫いたり、撃った相手を捕縛したりと。
鳳の矢は、魔法矢の一つ。
打つとまず火の鳥となって空中を旋回する。そして敵が近づいてきたら、自動で迎撃してくれる。
弱い敵はたいてい、これで死んでくれる。それでも生き残っているやつは、俺の持つほかの矢を使って狙撃して倒している。
「俺は何もしてなくない!」
「いーや、何もしてない。弓を持って後ろからぶらぶらしてるだけじゃないか」
「違う! 狙撃してるんだ!」
「ほー? おまえがいつ、どこで狙撃してるんだよ? たとえば、今日の敵での戦いではさ」
今日の敵は、飛竜王。Sランクの古竜種だ。
やつは上空を主なフィールドとしている。弓使いとして最も必要とされる場面だった。
「飛竜王を倒したのは、俺たち4人だったろ?」
「違う! あいつは、飛竜王は部下を連れてたんだ! 999体の飛竜!」
「嘘つけ。おれたちの前に現れたときには、飛竜王一匹だけだったじゃないか」
「だからそれは、やつが俺たちのもとへやってくるまえに、俺が雑魚の999体を倒してたんだよ」
「どうやって?」
「狙撃で。10キロ離れた場所から」
イジワルーも、そして仲間たちも、俺をさげすんだ目を向けてくる。
なんだ、信じてないのかもしかして……!
俺には魔法矢のほかに、周囲を索敵する特殊な、狩人としてのスキルを持つ。
それを使って今まで、俺はこいつらに近づく敵を、事前に倒していたのに……。
それはこいつらの負担を少しでも減らそうと思ってやってたことなのに……。
もしかして、今まで気づかれてなかったのか……?
「仮に、999体の飛竜をおまえが一人で倒したとして、どうやって? 自動迎撃とやらがマジだったとしても、さすがに飛竜999体は倒せないだろ?」
「ああ。だから俺が狙撃したんだ。早撃ちで」
俺は人外魔境にすむ狩人、【スナイプ】一族のなかでも、特に早撃ちが得意だった。
部族の中では、【早撃ちのガンマ】と呼ばれるほどだ。
俺が弓を構え、矢を打つまでの早さは光を超える。
たとえどれだけ的が離れてようと、素早く敵を正確に射貫く。だから……そうか……。
「お、俺の早撃ちが、見えてないのか……」
つまりこいつらは……。
俺があまりに敵を遠くから、すさまじい早撃ちで倒すもんだから、俺が敵を倒してるって……気づいてなかったのか……。
何もいってこないから、てっきり、俺のことをわかってくれてるとばかりに……。
イジワルーたちからすれば、やつらが知覚するより早く敵を倒してる俺は、こいつらがいうとおり、何もしてないだけに映るのだろう。
「見えてないもなにも、てめえは何もしてないだろうが。本当におまえが早撃ちとやらで、敵を遠くから倒せるなら、なぜ全滅させない? 飛竜王だって倒せるはずだろ、おまえひとりで」
「それは……! イジワルーが言ったからじゃないか! でかい獲物はおれのもんだ、手を出すなって!」
モンスターと群れで遭遇したときは、群れのボスを誰よりも早く見つけ出すことができる。
だから、俺はそのボス以外の雑魚を狩ってきたのだ。パーティリーダーの要求に、100パーセント応えてきた、裏方に徹してきたのだ。
「とにかく、おれはおまえみたいなパーティで何もしてないお荷物を、仲間に入れる気はこれ以上ない。学園長の頼みで仕方なく組んでやってたけどよ、そのじじいもついこないだ死んだし、もう義理立てる必要もねえんだわ」
そう……つい先週、お世話になった学園長が老衰でおなくなりになったのだ。
こいつらが俺をおいていたのは、学園長の頼みがあってこそだったのだ。
その枷がはずれたのだ。だから俺を外す……ってことか。
「とにかく、ガンマ。おまえみたいな役立たずの嘘つきは、もうおれらの仲間に必要ない。出てけ」
「そうだそうだ」「出てけ役立たず」「いつも後ろでぼーっとしてるだけの愚図が」
……なんだよ。なんなんだよ、こいつら。誰一人として、俺のこと理解してくれてなかったのかよ。
俺が、どれだけ面倒ごとを一人でやってきたか知らずに。
索敵にはじまり、周辺地図のマッピング、そのほか雑用を一手に買ってきたのは俺なのに。
「おまえ……本当に俺を追い出すのかよ。俺がいなくなったら、このパーティ……終わるぞ」
こいつらは自分の力を過信しすぎている。特にリーダーのイジワルーは顕著だ。
こいつは猪突猛進って言葉がお似合いなくらい。自分が目立つことしか考えておらず、とにかく剣で突っ込んできた。
敵も当然反撃してくる。そんなとき、俺はさりげなく敵がやりかえしてこれないように矢で動きを制限してきた。
また余計な邪魔が入らないよう、矢を使って敵の動きを誘導したり、隙を作るようにしてきた。
俺がサポートしてやんなかったら、こんなイノシシ頭、とっくに死んでいただろう。
「ふん! てめえなんぞいなくなっても問題ねえよカス。さっさと出てけ、Sランクパーティに寄生する、きっしょい寄生虫が」
こうして、俺は黄昏の竜を追い出されたのだった。
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