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7 思い出したくない過去

お待たせいたしました。新章開始です。

よろしくお願いします。

 忘れもしない、12歳の春。エリザベートは父親であるルードヴィヒから、正式にフランツ王子の婚約者に決定した、と聞かされた。


「どうして私なの!?婚約者候補の令嬢は10人以上いたし、フランツ王子は私のことを『可愛げのない女』って馬鹿にしてきたのよ!!」


 フランツは、見た目()()は完璧だった。

 輝くような金色の髪にコバルトブルーの瞳。

 同い年ながらもすでに顔の造作は出来上がっており、その場にいた令嬢達は誰もがうっとりと熱い視線を送っていた。───ただ一人、エリザベートを除いては。


 9歳になってすぐに催された婚約者候補を集めたお茶会でのこと。エリザベートは、フランツが自分達を完全に見下していることにすぐに気づいた。

 幼い頃から帝王学を叩き込まれている王子と一介の令嬢とでは知識量に差があるのは当然なのに、令嬢達にチヤホヤされて得意げにしている姿を見てげんなりしてしまった。


(この人…王子のくせにバカなの?)


 そう考えていたのが顔に出てしまったのか、他の令嬢達のように自分を褒めないエリザベートに、フランツはわざと難題をふっかけてきた。


「先日魔法学の講師から出された課題なのだが、相反する属性の魔法を同時に使った場合の効果について……エリザベート嬢、君は知っているか?」

「……わたくしが、答えるのですか?」

「ああ。分からないならそう正直に言ってもらって構わない。なにしろ、これは学園入学後に学ぶ内容だからな。君が分からなくても何も恥ずかしいことは───」

「反属性の魔法の効果は、全部で3つ。抑制、相殺、そして相乗効果ですわ」

「───っ……そ、その通りだ」


 苦虫を噛み潰したような顔のフランツに目もくれず、エリザベートはカップを手に取ってお茶を飲んだ。


「エリザベート様、すごいですわ!」

「流石はシュタインベルク家のご令嬢ね」


 周りの令嬢達がエリザベートを称賛している手前、仕方なくといった風にフランツが口を開いた。


「ふん……少しは知識があるようだが、あまり調子に乗るなよ?可愛げのない女は嫌われるぞ」


 しーん、と一瞬その場が静まったかと思うと、すぐに取り繕うように誰かが声を上げた。


「そうですわよね!女性は可愛らしさが一番ですもの」

「フランツ様も可愛い女性がお好みですのね?」

「ああ、そうだな」


 輝くような笑顔でにっこりと相槌を打ったフランツに、令嬢達が一気に色めき立つ。


(はいはい、そうですか。可愛げがなくて悪かったわね。あなたが質問してきたから答えただけなのに。あぁ、もう早く帰りたい……)


 あれから数年経つにもかかわらず、そのことを思い出しただけでムカムカしてくる。思わずしかめ面を作ったエリザベートに、ルードヴィヒが答えた。


「まず一つには家柄だ。我が家が五大魔道爵家のトップなのは知っているだろう?……あとは、お前の見た目が気に入ったそうだ」

「は…?見た目……?」


 フランツが自分を選んだ理由を聞いて、エリザベートは唖然とした。そしてその言葉を裏付けるように、婚約者としての初顔合わせの席で、フランツはあろうことかエリザベートの顔を見るなりこう言い放ったのだ。


「ふん……まぁ、相変わらず顔だけは及第点と言えなくもないな。お飾りの婚約者としては十分だろう」


 あまりの言い草に言葉を無くすエリザベートに、フランツはさらなる追いうちをかける。


「お前との婚約は、俺の王太子としての地位を確立するためのものだ。お前の価値は筆頭魔導爵家の娘であるというただ一点のみ。間違っても俺からの愛情など期待するのではないぞ」


 幼いながらも、政略結婚であることは分かっていた。そこに世間一般の愛情を求めてはいけないことも、何となく感じてはいた。


 しかし、それをはっきりと口に出されるのは、エリザベートにとって思っていた以上のダメージだった。しかも、まだ恋愛さえしたことがない年端のいかない少女に浴びせるには、あまりに酷な言葉たち。

 とはいえ、相手はこの国の王子である。口答えするわけにもいかず、悔しさに唇を噛み締めながらただエリザベートは深く頭を下げるしかなかった。


 それから5年間、エリザベートは名実ともに"お飾りの婚約者"であり続けた。


 普段はもちろん、誕生日にさえ一度たりとも贈り物をされたことなど無い。

 お茶会や夜会でのエスコートは初めの入場時のみ。ダンスも踊らずエリザベートを放置したまま他の女性と行方をくらませるフランツのせいで、どれだけ恥ずかしい思いをしたか分からない。

 王妃教育のために王城へ行けば、見計らったようにフランツはいつも留守。勉強をさぼってお忍びで城下に遊びに行っているらしいと、エリザベートは色々な方面から耳にしたことがある。

 魔法学園に入学してからも、フランツは自分よりも成績が良いエリザベートのことは完全に無視して、常に数人の取り巻きの女子生徒を連れて歩いていた。


 そんなフランツの様子が一変したのは、ちょうど一年前。一つ下の学年に、とある女子生徒が入学した後のことだった。


ここまでお読みくださいまして、どうもありがとうございました。

第二章は、基本的に毎週水曜日と日曜日に更新していこうと思っています。


ブックマーク、評価、どうもありがとうございます!

とてもとても励みになっています!!

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