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1 エリザベート、追われる

新連載を始めます。

異世界転移&前世の記憶あり、魔法チートのお嬢様が3人のお供を引き連れて旅に出るお話です。

冒険あり、恋愛あり、最後はざまぁありで、スカッとして終わりたいと思っています。

よろしくお願いします!

 ハァ、ハァ、と息を切らせながら、一人の少女が走っている。

 背後を気にするように何度も振り返りながらようやくたどり着いたのは、見上げるほどの大きな黒い門。前に立つ門番が少女の姿を見て目を丸くした。


「……お嬢様!?こんなところで、しかもお一人で…一体どうなさったんですか?」

「カール、とにかく中に入れて!事情は後から話すから。私、追われてるのよ!!」

「っ…分かりました!さぁ、こちらへ」

「ありがとう」


 使用人が出入りする小さな通用門から素早く身を滑り込ませた少女は、一目散に屋敷へと駆け出す。

 バタン!という大きな扉の音を聞きつけて、すぐに使用人達が集まってきた。


「お嬢様、これはいったい…?ハンスはどうしたのです?」

「ごめんなさい、説明は後で!お父様にすぐにお話ししたいの!」

「かしこまりました。すぐ呼びに──」

「これは一体何の騒ぎだ?」


 執事らしき壮年の男性の言葉は、背後から現れた人物によって遮られた。

 玄関の正面にある大きな階段からゆっくり降りてくる姿は、まるで絵画から切り取られたように美しい。


「お父様!!」

「エリザベート、どうしてお前がここに?………いや、待て。何があった?」


 娘の様子から何やらただならぬことが起きていると瞬時に悟った父親──ルードヴィヒが、眉間の皺を深くして尋ねた。


「フランツ殿下に王城の地下牢に入れられそうになったの!私が魔女なんですって!あと、物を盗んだとも言われたわ」

「なんだと?それで一人で逃げてきたというのか?」

「ええ、仕込んでおいた転移陣が役に立ったわ。ハンスは置いて来ざるを得なかったけれど」


 そう言いながら、エリザベートが胸元にあるネックレスを掲げてみせる。ハンスというのは、エリザベートの幼馴染かつ専属護衛の名前である。


「あいつは自分の身ぐらい何とかできるだろう。それよりも……今の話が本当なら、もうすぐここにも追手が来るということだな?」

「おそらくは」


 娘の言葉にほんの一瞬だけ思案顔になったものの、すぐにルードヴィヒはてきぱきと指示を出し始めた。


「エリザベート、お前は例の部屋に入っていなさい。やり方はわかるな?」

「ええ、大丈夫よ」

「よし。…ヘルマンはすぐに影を何人か王城に偵察に行かせるように。できればハンスの様子も探って来い」

「かしこまりました」


 短く返事をしてその場から下がる執事と階段を駆け上がっていく娘を見遣ってから、ルードヴィヒが侍女頭に視線を移した。


「アルマ、私の執務室まで来るようエルンストに伝えてくれ」

「はい、旦那様」

「他の者はいつも通りに。エリザベートのことはもちろん他言無用、王城からの使いの者が来たら、急な客に驚いた様子で対応するように」


 はい、という使用人たちの返事を聞いて、ルードヴィヒは急ぎ足で自分の執務室へと向かう。

 以前からあの王太子は何かやらかすだろうとは思っていたものの、まさかこんなに早く事を起こすとは予想外だ。


(よりによって私の可愛い娘に危害を加えるとは……さて、一体どうしてくれようか?私はともかく、あいつは生半可な仕置きでは満足しないだろうな)


 これから始まる自分以上にエリザベートを溺愛する男との話し合いを想像して、ルードヴィヒは口元に薄らと笑みを浮かべたのだった。



*****



 エリザベートが2階の奥にある古びたドアを開けると、しばらく使っていない部屋特有のカビ臭い匂いがした。


「えーと、確かこのへんに……あった!」


 手探りで魔道具に触れると、部屋に仄かに明かりが灯る。

 見渡す限り何もないこの部屋の名前は『無の間』。部屋自体が、全ての魔力を一時的に無効にすることができる特殊な魔道具になっている。


「───【無効化】」


 部屋の鍵をかけたエリザベートが両手を前に出して唱えると、バシッ!という衝撃音とともに、身体から何かが吸い取られていくような感覚がした。


「っ……これが無効化………なかなか、きついわね」


 身体に力が入らず床にへたり込んだエリザベートは、ガランとした部屋を見渡しながら今日王城を訪れた時のことを思い出していた。


「それにしてもあのバカ王子……人のことを泥棒扱いしたかと思えば、次には国を滅ぼす魔女ですって!?……ああ、思い出しただけで腹が立ってきた」


 婚約者であるフランツ王子への愛想などとっくの昔に尽きていたが、今日の振る舞いはさすがに許容範囲を超えていた。

 思えば、幼い頃フランツの婚約者候補として王城を初めて訪れた時から、エリザベートはずっと王子から酷い態度を取られ続けてきたのだった。


ここまでお読みくださいまして、どうもありがとうございました。

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