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あれ? 結局喧嘩してない?

「読み書きも覚束ないお前が、魔法を使いたいだと……? お前、魔法をなんだと思ってるんだ」


 えー、よくわかんない。

 ゲームだとパラメータ上げてスキルボタン押したら出たし。

 とか言ったら怒られるので、私は言葉を飲み込んだ。


 ゲーム内では魔法学の教師として登場するし、実際使える魔法使いキャラだったから、兄の得意技に寄り添ってみたんだけど、どうしてこうなった。


「魔法の行使には、魔術書を読む読解力、術式を構築する計算力、さらに魔法陣を描く技術力が必要だ。お前に魔法を教えたところで、何も理解できなくて放り出すのがオチだ」


 つまり、魔法を使うには魔力のほかに基礎学力が必要ってことね。

 そういえば単純に魔力のパラメータだけ上げても、使える魔法の種類が増えなかったな。コマンド操作でやっていたことを現実にするとこうなるのか。

 同時に、兄の怒りポイントも理解する。

 今まで努力して身に着けた技術を『教えてー』って雑に尋ねられたら腹がたつよね。


「アルヴィン、もう少し言い方というものがあるだろう」

「父様、俺は事実を言ったまでです」

「リリィ、怒らないでちょうだいね。お兄様はあなたのことを思って……」

「わかったわ。魔法を教えて、とは言わない」

「……そう、わかってくれたのね」

「今のところは、諦めてあげる」

「リリィ?」

「お勉強ができないから、魔法が使えないんでしょう? じゃあ、努力するわ」

「なに……っ」


 私の宣言を聞いて、兄も、両親も、後ろに控えているメイドたちも目を見開いた。

 その気持ちはわかる。今まで『努力する』なんて言ったことないもんね。

 でも、今の私は違う。

 目的のために努力できる小夜子、という味方がいるから。


「どうしてびっくりしてるの、お兄様。さっきも言ったじゃない、素敵な淑女になるために勉強をがんばるって。そこに目標がひとつ増えただけだわ」

「それは、そうだが」

「まずは、今いる家庭教師に教えてもらって、その……読解力とか計算力とやらを身に着けるわ。魔法が学べるくらい、お勉強ができるようになったら、改めてお兄様に魔法のことを聞くから!」

「お前には無理だ」


 兄様は冷ややかな目で私を見る。

 む、さすがにちょっとイラっときたぞ。

 今までが今までだからしょうがないけど、ここまで見下されるとさすがに腹が立つ!


「お兄様、今私をバカにしたわね」

「事実バカなんだからしょうがないだろう」

「ちゃんとできるもん」

「なにひとつやりとげてないお前の言葉なんか、誰が信用するもんか」

「むう……ということは、やりとげたら、信用するのよね?」

「ん、まあそういうことになるか」

「じゃあお兄様、賭けをしましょう!」

「賭けぇ?」

「これから私はお勉強を頑張るわ。今年の冬のお休みまでに、魔法を教えてもらう準備を全部終わらせるつもり」

「半年で全部か? 大きく出たな」

「早く魔法を使ってみたいもの」

「……ハッ」

「期限までに本当に全部できたら、私のお願いをきいてちょうだい」

「ふうん? 結局ワガママか」

「違うわ、正当な賭けよ!」

「わかったわかった。冬までに本当にできてたらな」

「約束したからね! ちゃんと冬のお休みに確認しに帰ってきてよね!」

「はいはい」


 兄様に軽くあしらわれて、私は頬を膨らませる。

 あっれーーー? 和解するつもりが、喧嘩してない?

 でも、ここで折れたらなんか違う気がするし。


 クソゲー世界、攻略が難しすぎだよ!!


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