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塩分過多で死にそう

 ハーティア王国を救うため、ひいては自分の人生を救うため、兄と仲良くしよう!

 ……と、意気込んでは見たものの。


(無理ゲーだったかもしれない……)


 夕食の席についた私は、早くも心が折れそうになっていた。

 そこには両親に加えて、王立学園から無理やりタウンハウスに呼び出された兄がいるんだけど……めっちゃくちゃ機嫌が悪い。


 父様が話しかけても

「今日はお前のために鴨を用意させたぞ。たっぷり切り分けてやろうな」

「一切れで結構です」

 塩対応。


 母様が話しかけても

「この果実水おいしいわね。学園に戻るときには1瓶持っていく?」

「必要ありません」

 塩対応。


 当然、私が話しかけても

「お兄様、学園でのお話聞かせて」

「断る」

 塩対応。


 すべての会話が塩!

 塩分過多で中毒になりそうなくらい塩!

 うう……小夜子のころから数えると半年ぶりくらいのまともな食事なのに、全然味がしない。

 せっかく、おいしそうな固形物の食事が並んでるのにもったいないよー。


「そういえばリリィ、大変だったわね」


 気まずすぎる会話に耐えられなくなった母様が、私に話を振ってきた。


「せっかく王妃様主催のお茶会に出席したのに、倒れちゃうなんて。体はもう大丈夫? 痛い所はないの?」

「大丈夫です、母様。すっかり元気になりました」

「そう、よかったわ。今年のお茶会シーズンはもう終わりだけど、来年もう一度お茶会に出ましょうね」

「……来年?」


 ぞっとするような低い声で、兄様が言った。


「コイツを来年も社交の場に出すつもりなんですか」

「ええ、そのつもりよ。確かに今日は失敗しちゃったかもしれないけど、子供はそうやって大きくなるものだわ。また来年もお茶会に出して経験を積ませてあげなくちゃ」

「クレイモア辺境伯に迷惑をかけて、第一王子に拒否されて、さらにフランドール先輩の顔に泥まで塗った人間に、次を与えてやる必要などないでしょう。もっと大きなトラブルを起こしてハルバード家の名前に傷をつける前に、修道院にでも送ったほうがいい」


 兄はどこまでも冷たい。

 確かにお茶会の席でかなりやらかしちゃったけどさー、10歳の子供にそこまで言うことなくない? そもそも家から離れている兄に家名うんぬん言う権利はないような。

 ……あれ?

 そういえば、兄が問題視しているポイントってなんかおかしくない?

 どうして、伯爵よりも王子よりも、宰相家の息子に迷惑をかけたほうが、重大事のように語ってるわけ?


「……お兄様、フランドール様とお知り合いなんですか? さきほどから、先輩と呼んでいらっしゃいますが」

「フランドール先輩は、王立学校学生寮の監督生だ。入学当初から非常にお世話になっている。あんなに優秀で、すばらしい方はいないというのに、お前ときたら……!」

「ご、ごめんなさい……」


 なるほどー。

 馬鹿な妹が敬愛する先輩に悪態ついたのが許せなかったのねー。

 ゲームの記憶が確かなら、フランドールは現在17歳。兄の2学年上だ。ちょうど学園に通っている期間が重なっていたから接点がありそうだな、とは思っていたけど……まさかこんなに仲がいいとは。


「まあまあ、落ち着きなさいアルヴィン」


 父様が私たちの会話に割って入った。


「今回のこと、リリアーナに本気で腹をたてている人は、誰もいないよ。クレイモア辺境伯は、顛末を聞いて『元気があって大変よろしい』とおっしゃっていたし」

「あの方は、とにかく元気ならなんでも許すじゃないですか」

「王妃様も、リリィのことを気に入ったみたいよ」


 ふふふ、と母様が笑う。


「なにしろ、第一王子であるオリヴァー様と婚約させたい、とのご相談を頂いているんですもの」

「「はあ?!」」


 私と兄は同時に叫んだ。


「おや、王妃様からもお誘いがあったのか。僕のほうには、ミセリコルデ宰相から、息子と結婚を前提とした付き合いをさせたい、という手紙が来ているんだが」


「「はあーーーーーー?!」」


 もう一度、私と兄は同時に叫んだ。


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