兄の贖罪
「ギュスターヴ?」
国王陛下が宰相閣下を振り仰いだ。
判断しろ、ってことなんだろう。
「残念ながら、グラストンをヘルムート討伐の指揮官にするわけにはいきません」
「どうしてですか」
グラストンは声をふるわせる。
「カトラス侯は、父親を自らの手で断罪することで侯爵家の汚名をそそぎました。私にも弟の罪を裁き、ランス家を守る機会をお与えください」
ハーティアにおいて、貴族が重罪を犯した親族の連座から逃れる術がひとつだけある。
自らの手で告発して断罪することだ。
ダリオ・カトラスの父親は人身売買に手を染めていた。本来は家ごと罰される重罪である。それでもカトラス家がまだ存続できているのは、長男のダリオが自らの手で父親を捕らえて処刑し、その首でもって減刑を嘆願したからだ。
グラストンは、ダリオと同様の贖罪をしたいのだろう。
しかし宰相閣下は首を振った。
「自らの手で親の犯罪を明るみに出したカトラス候と、すでに罪が公になっているランス家とでは、状況が違います。今のあなたを総大将としても、『弟かわいさで手心を加えるのでは』と不審をまねく結果にしかならないでしょう」
「く……」
ぎり、とグラストンは歯噛みする。
「ですが、彼を一兵卒として従軍させてもよいと思います。騎士としての戦闘力が高く、城の構造に精通しています。指揮官補佐としての能力が期待できるでしょう」
宰相の提案を受けて、国王陛下はため息とともに声を出した。
「……許す」
「ありがたき、幸せ!」
グラストンはその場に膝を折った。
指揮権は与えられないが、従軍は許可する。これが宰相閣下の出せる妥協点なんだろう。
戦場に向かえば、失墜した家名を救う手柄を得られるかもしれない。
ぎりぎり生き残るチャンスが与えられた状況だ。
「それで? 結局誰がヘルムート討伐の指揮をとるのかしら」
王妃がのんびりと言った。
次に問題になるのはそこだと思うけど、ドライすぎませんか。
責任範囲が明らかになって、自分に累が及ばないとわかったから気が抜けたんだろうか。
「それが問題なのです」
宰相閣下はテーブルに広げられた衛星写真に目を向けた。
「現在のランス城には、少なくとも千五百、多くて二千五百の兵が籠城していると思われます。城攻めを行うなら、その倍の戦力……五千の兵が必要です」
「セオリー通りだな」
「兵の数自体は集められなくもありません。ただ、勇士七家の名門騎士伯爵の居城を攻められるほどの指揮官となると……」
「ユリウスは使えないのか?」
「おそれながら陛下。第一師団を預かる騎士団長、ハルバード侯爵はいまだ魔の森に留まっております」
そういえばそうだった!!!
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