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【紙書籍】【コミカライズ】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は王宮で過ごしたい

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エレベーター

 ぎい、と耳障りな音をたててエレベーターの扉が開いた。

 私とクリスは、まだ意識の戻らないタニアを抱えて、エレベーターの籠から降りる。その先は真っ暗だ。

 私はスマホのライトモードを起動して、奥に光をあててみた。

 道幅は二メートルくらい。人間ふたりがすれちがって通れる程度の石造りの道がまっすぐ奥へと続いてる。


「通路の底まで降りるしかけがあってよかったな」


 クリスがエレベーターを振り返り、わきに設置された梯子を見上げた。今いる場所のはるか上、抜け穴の入り口まで、梯子の取っ手がずっと規則正しく続いている。


「抜け穴の入り口からここまでは、深さが二十メートル以上あるわ。梯子だけじゃ危なくて脱出できないって、考えたんでしょう」


 私はエレベーターを改めて見つめる。

 格子で囲まれた四角い檻のような籠を上下させるだけの、簡素なつくりのエレベーターだ。重りを使って籠をゆっくり上下させる仕掛けになってるようだけど、詳しいことはわからなかった。


「なんにせよ、この仕掛けがあってよかったわ。右腕を怪我したクリスと私だけじゃ、梯子でタニアを運べないもの」

「人を浮かせる魔法は使えないのか?」

「降りてる途中でエレベーターが止まったら使おうって、身構えてたけどね。重力魔法は魔力消費が激しいから、ここぞって時しか使えないのよ」


 女性三人を二十メートル下まで運ぶのは、無理じゃないけど簡単でもない。

 私程度じゃ、全員運び終わったあとに魔力切れで倒れてしまうだろう。


「出口まではまだ少し距離がある。魔力を温存するに越したことはないわ」


 通路を照らすのに、光魔法ではなくスマホのライトを使っているのも、同じ理由だ。

 ここはMP回復アイテムがいくらでも手に入る女神ダンジョンじゃない。魔力を消費しても、そう簡単に回復しないし、術を行使すればそれだけ疲労がたまる。

 王家の抜け道を使うことは、もちお経由で連絡しておいたけど、出口があるのは王家専用エリア。宰相家のメンバーでもすぐには入ってこれないだろう。

 味方と合流できるまでは、手持ちでやりくりするしかないのだ。


「この奥へ行けばいいんだよな?」


 真っ暗な道の先を指して、クリスがたずねてきた。私はスマートグラスの縁を軽く叩く。


「もちお、案内をスマートグラスに投影して」


 しかし、ガイドAIのイケボは聞こえてこなかった。視界の隅に表示されていた、ちょいぽちゃブサカワ系白猫のアイコンもいない。


「どうした、もちおに何かあったのか?」

「スマホの通信が切れたみたい」

「まさか、あっちでも何かあったとか?」


 私は苦笑しながら首を振る。


「大丈夫、予想の範囲内よ。私たちがいるのは地下でしょ? ここまでは衛星の電波が届かないのよ」


 女神と邪神の戦いが終結してから何百年もたつ地上には、スマホの通信を支える基地局が存在しない。かろうじて宇宙空間に残されている衛星を利用した衛星通信頼みだ。だから、空の見えない地下ではスマホが通じなくなるのだ。

 クリスが無事なほうの腕でタニアを抱えなおす。


「もちおのサポートが受けられないのはわかった。タニアは私が連れていくから、明かりをお願いしていいか?」

「私も支えるわよ」


 意識のない人間を抱えるのが、かなり重労働だってことは私も知っている。怪我をしたクリスひとりに押し付けるわけにはいかない。


「いや、この道幅で三人固まって歩くほうが危険だ。私の体力なら、左手一本でも十分タニアを支えられる。リリィは何かあった時のために、明かりだけ持っていてくれ」


 私は騎士の申し出に素直に従うことにする。クリスがいてくれてラッキーだった。

 私ひとりだったら、倒れたタニアを運ぶことはできなかっただろう。

 ラッキーといえばこの抜け穴もだ。

 正直な話、タニアを無事に地下へ運ぶ自信はなかった。攻略本にエレベーターの情報はのってたけど、まともに動くとは思ってなかったのだ。

 梯子も、通路もそう。

 もっと埃だらけで、蜘蛛の巣が張ってあるような場所だと思っていたけど、そうじゃない。ほこりっぽい感じはしないし、どこを向いても突然虫が出てくる様子もない。

 明かりがないだけで、王立学園の廊下とさほど変わりなかった。

 まるで誰かが頻繁に行き来していたような。


「……え?」


 そこまで思考したところで、背筋にぞわっと悪寒が走った。

 タニアを襲った誰か。

 神の目に映らない侵入者。

 タイミングが良すぎる橋の破壊。

 手入れされた抜け道。

 これらが意味するのは。


「クリス、止まって! ここも罠よ!」


 叫ぶと同時に、闇の中から何者かが襲い掛かってきた。


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