ゲームじゃない!
国を立て直そうと思ってるのに、王子と王妃が未来の貴族家当主たちからものすごい恨みを買ってました。
状況が深刻すぎて、茶化す気にもならない。
えーこれどうやったら、改善すんの。
だいたい、王子様のキャラがおかしくない?
「……オリヴァー様って、そんなに恨まれるような方でしょうか」
隣で話を聞いていたセシリアがぽつりとこぼした。それを聞いてケヴィンが首をかしげる。
「セシリアはどうしてそう思うの」
「あ、あああっ、あの、優秀だと伺っていたので! 風の噂で!」
「あいつも生まれた時から英才教育は受けてきたからなー。勉強も武術も人並み以上にはできるはずだ」
そうなんだよね。
王子は攻略対象。つまり、ヒロインと恋に落ちる可能性があるほど、優秀な人だ。
実際、王子ルートでは聖女と力を合わせて両親に対抗し、国を立て直そうとしていた。国を蝕む母親に反発し、己の存在意義に苦しむ彼を支えるのが、王子ルートの聖女の仕事だ。
そもそも登場シーンの時点で母親も悪役令嬢も毛嫌いしてたんだよね。
自分を王子というコマにしか見てないからって。
「……そもそも王子様と王妃様って、こんなに仲よかったっけ?」
私が疑問を口にすると、ケヴィンは腕組みをして天井を見つめる。
「そういえば、子供のころは一緒にいるのを見たことがなかったなあ。王妃様のパーティーに出席するようになったのって、ここ数年の話じゃない?」
「手駒が減って、息子が惜しくなったんだよ」
ヴァンが吐き捨てるように言った。
なにそれどういうこと?
「何年か前までは、王妃派っていえば王宮の一大勢力だっただろ」
「貴族に加えて、騎士団や王立学園にまで影響してたわよね」
ゲームでは、王妃の勢力範囲に何度涙をのんだことか。どこに行っても、何をやっても王妃様の息のかかった貴族に邪魔されるからね!
「その風向きが変わったのが、4年前のマクガイア汚職事件だ」
「あー、宰相閣下が第一師団長を告発したあの事件!」
フランがハルバードに転がり込んできたり、父様が第一師団長になったりした事件だ。忘れようにも忘れようがない。
「ハルバード候が入ったおかげで、騎士団は正常化。王妃と関係していた貴族は宰相が根こそぎ取り締まった。さらに、お前の兄貴が王立学園の王妃派を全員追い出した」
「あれ……? そう考えると、今の王妃様の協力者って結構減ってる?」
「まあ一時期ほど多くはねーな。かといって少ないわけでもねーけど」
ヴァンは肩をすくめる。
「で、だ。それだけ味方が減ってる状況で、自分の地位の根拠になってる、『息子』を放っておくと思うか?」
「思わない……」
理屈はわかるけど、今まで放置してたくせに勢力維持のために息子へすり寄るとか、王妃様のお腹、真っ黒すぎない?
ケヴィンが疲れたため息をつく。
「そういえば、王妃様のお茶会に呼ばれたとき、彼は結構楽しそうに参加してたんだよね。お母様に招待されたって」
「今まで無視してきた母親が急に構ってくれるようになったから……喜んじゃったんだね……」
事情が事情なだけにいたたまれない。
そういえば、ゲームイベントで幼少期を寂しく思い出すシーンあったね。本当は母親に愛されたかったって、涙ながらに語ってたね。
ゲーム内では自分を愛さない両親を反面教師にして、なんとか周りを愛そうとする子だったけど! いざ母親に関心を向けられたら、こうなっちゃうかー!!
国を立て直すために王宮の問題を解決してたら、王子様がマザコンになったよ!
どうすりゃいいの!
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