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従者の着せ替えをして何が悪い

「で、こうなったわけか」

「ぼ、ぼぼ、僕、恥ずかしい……」

「似合ってるんだから、胸を張っていいのよ」


 父様に直談判という無茶ぶりをしてから1時間後、私の専属従者となったジェイドは、早速ハルバード家のお仕着せ使用人服を着せられていた。成長期の子供にあわせた、シンプルなチュニックに丈の短い吊りズボン、そして首元にはボウタイが結ばれている。

 かわいい。

 めっちゃかわいい。

 さっきのごついローブ姿もアンバランスでよかったんだけど、年相応の恰好をしているジェイドはより一層かわいい。

 ほめちぎっていると、ジェイドは居心地悪そうに背中を丸めた。


「うう……でも」

「いいから背筋を伸ばすの。いい? かわいいっていうのは、すごーくお得な才能なの」

「お、お得? 才能?」

「見たでしょ? ジェイドを着替えさせたメイドたちの反応。顔を隠していた昨日は遠巻きにしてたけど、素顔を見たとたんあっさり使用人仲間として受け入れてくれたじゃない」

「そ、そう、かな」

「せっかく才能に恵まれたんだから、活用していかないと!」

「……はあ」

「まあ、お嬢の言い分は暴論だが、確かに背筋は伸ばしたほうがいいな」

「そう、なの?」

「お嬢の従者になった以上、お前はお嬢の一部だ。しょぼくれた奴を連れてたんじゃ、お嬢が恥をかくことになるぜ」

「あ……そ、そっか」


 こくん、とうなずくとジェイドは顔をあげた。まだ顔は引きつってるけど、少なくとも背筋はぴんと伸びている。

 うーむ、教育に関しては、やっぱりディッツのほうが一枚上手だな。


「それで、ディッツたちの部屋はここになったわけ?」

「ああ。元は庭師夫婦が住んでいた家らしい」


 私たちが立っているのは、城の裏手のボロい小屋の前だった。

 一応城壁の中ではあるものの、城の敷地のはずれのはじっこで、日当たりだってよくない。


「専用の寮だってあるっていうのに、他の使用人と一緒にすると面倒だからって、クライヴめ……。ちょっと待ってて、城で一番いい部屋もぎとってくるから」

「待て待てお嬢。城の外に部屋が欲しいって言ったのは俺なんだ」

「あんたマゾなの?」

「違えよ。魔法の実験のためだ。モノにもよるが、やり方によっちゃあ、爆発したり、変な煙が出ることがあるからな」

「あー、居住区の真ん中でそんなことされたら、事件になるわね」

「そういうこと。小屋の中に竃はあるし、近くにボロいが井戸もある。雑草も少し片づければ薬草畑にできるだろ。俺としては最高の職場ってわけだ」

「あああああ、あの、僕も、片付け、手伝う」

「おう、頼りにしてるぜ。なにしろ、他の連中に薬の材料を触らせるわけにはいかねえからな。この小屋の掃除は全部俺たちの仕事だ」

「大変ねえ。魔法の授業が始められるのは、いつになることやら」

「いいや、そうでもないぜ?」


 ディッツは、にやーり、と人の悪い笑みを浮かべた。

 あ、これは何かを企んでる顔だ。

 そう思っている私の手に、古びた本と大量の紙束が渡される。


「魔法の授業、レッスン1だ。まずは、この本全部書き写してもらおうか」

「はいいいい?」




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