再びの騎士
「このクソガキども……」
裏切りの護衛騎士ラウルは、警備兵の詰め所との間に立ちふさがるようにして、剣を構えた。まだ目元を赤く腫れあがらせたまま、鋭くこちらを睨む。
シルヴァンが一度はうまく撒いたはずだったけど、悪代官ギデオンに絡まれていた間に発見されてしまったらしい。
人混みの中ではフィーアの索敵能力はやや落ちるし、私たちの注意もギデオンに向けられていた。そのスキに接近し、攻撃の機会を見計らっていたようだ。
「ふざけんじゃねえ、さっさと死ねよ!」
ラウルは苛立ちまぎれに、吹っ飛ばされて倒れたフィーアを蹴りつける。細くて小さなフィーアの体は、簡単に道の端まで転がっていった。
「ラウル、お前はなんてことを! 騎士の誇りはないのか?」
「ハッ、誇りが俺たちに何をしてくれる!」
シルヴァンが剣を抜いて、ラウルに相対する。
フィーアが倒れた今、ベテラン護衛騎士の攻撃を受けられるのはシルヴァンだけだ。私とクリスティーヌは、身構えながらも彼らから距離を取った。
「こんなところで殺し合いをしていいの? さっきの騒ぎを聞いて警備兵がもうすぐやってくるわよ」
「どのみち、お前らを殺さないと俺に未来はねえんだよ」
私たちはすでにラウルの正体を知っている。警備兵が来ても来なくても、今この場で私たちを殺さない限り彼に起死回生の目はない。生きるか死ぬかの瀬戸際で、なりふりなんか構っていられないってことらしい。
「ラウル、お前どうしてそこまで……あんなに立派な騎士だったのに」
「騎士たるもの、高潔たれ? 弱きものを助けることこそが、騎士の誉れだ? そんなのは戦場で兵を安く使い潰すための方便じゃねえか!」
「それは違う!」
「何が違うっていうんだ。こっちは命を張ってるっていうのに、俸給はスズメの涙! そのくせ、領民には施しをしろ、領地の整備をしろ、鍛錬は休むな。つきあってられるか!」
「だがそれは、国を守るために……」
「その前に俺たちを守れっての!」
ラウルが鋭く切りつけてきた。シルヴァンは間一髪で白刃をかわす。
「その上、跡取は貧弱な無能ときたもんだ」
「な……」
「シルヴァンのどこが無能なのよ!」
私の反論をラウルは鼻で笑い飛ばした。
「見たらわかるだろ。体も骨も大きくなる時期だっていうのに、いまだに女のように細くて、力もない。身のこなしは早いが、それだけだ。圧倒的な力の前にはなすすべもない」
「く……」
ラウルの言い分を、私は否定できなかった。
だってシルヴァンは女の子だから。どうあがいても、パワー勝負では大人の男に太刀打ちできない。
「悔しいなら、俺の太刀を受けてみろよ。一発で吹っ飛ばされてお終いだろうがな!」
ブン、とラウルが上段から剣を振り下ろしてきた。
まともに受けるわけにはいかないシルヴァンは、剣で勢いをいなして、よけようとする。しかし彼女の戦法はラウルにはお見通しだった。
「ほらよっ」
避けた瞬間を狙って、体当たりをくらわしてきた。体の軽いシルヴァンは、そのまま壁にたたきつけられてしまう。
「う……」
「シルヴァン!」
彼女は必死に体を起こそうと顔をあげる。しかし、次の瞬間すうっと顔が青ざめたかと思うと、くたりと地面に倒れ伏してしまった。
「お? 当たり所が悪かったか? いや、この場合は良かったのか。さて、あとはお嬢様と変なガキひとりか」
「……っ」
「おっと、逃げていいのか? シルヴァンも獣人もトドメをさされて死ぬぜ」
ここに留まっても殺す気でしょうが!
迷っているうちにも、ラウルは剣を構えて迫ってきていた。
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