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お勉強は明日から!!

 明日からやるって言ってたことって、明日になってもやれないものだよね。


 領地のお城に戻ってきて、さあ本格的に勉強を頑張るぞ! と思っていた私は、何故か音楽室に連行されていた。

 引っ張ってきたのは、母様だ。

 音楽室といっても、ここで楽器を演奏したり歌ったりするわけじゃない。

 私に渡されたのは動きやすいドレスだ。


「素敵な淑女を目指すなら、やっぱりダンスのお勉強をしなくちゃね」


 その謎のダンス推しは何なんですか、母様。

 逃げようと思ったけど、楽器を構えてスタンバイしてる侍女が4人も並んでたので、そうもいかなかった。

 そうだよね、音楽プレーヤーもスピーカーもない世界だもんね。ダンス音楽をかけようと思ったら、直接人が演奏するしかないよね。

 ダンスのコーチと、お世話係のメイドをいれて、総勢6人もの大人に準備をさせておいて、やりたくないからやだ、とはさすがに言えないよ……以前のリリアーナなら言ったかもしれないけど。


 ダンスなんてやったら、午後勉強する体力がなくなっちゃうけどしょうがない。

 他の科目に集中したいとかなんとか説得して、今度から準備をさせないように調整しよう。

 お勉強は明日から!

 明日からは絶対やるから!!


「リリィ、まずは基本のステップからね。先生の真似をしてみて」

「はーい……」


 リズムがとりやすいよう、静かな音楽をかけてもらいながら、123、とステップを踏んでみる。

 運動って、あまりいい思い出がないんだよね。

 ちょっと走っただけで胸が苦しくなるし、めまいがしてくるし。

 小夜子のころは、体育の時間がひたすら苦痛でしかなかった。

 早く授業が終わってほしいなあ。


 ……ん?


 ……あれ?


 おや……?


 何コレ。

 踊るのってたーーーーのしーーーーー!


 どういうこと?

 体を動かすのが気持ちいいんだけど!

 ずっとやってると、確かに息は上がってくる。でも、気持ちいい苦しさっていうか。

 全身に血が巡って、体が温かくなるのがわかる。


 それに、私の体はどこまでも自由だった。

 頭のてっぺんからつま先まで、自分の体が思う通り綺麗に動いてくれる。


 ああ、そうか。

 この体は健康なリリアーナのものだった。

 病弱で、体力のなかった小夜子じゃない。

 健康な体って、動かせばこんなに気持ちのいいものだったんだ。そりゃあ、スポーツやダンスが流行るわけだよ。体が適応できれば、こんなに楽しいものはないもの。


 調子に乗ってクルクル回っていると、突然足がもつれた。


「あたっ!」

「そのステップは、まだ難しかったみたいね」

「でも、お嬢様は才能がおありですよ。初めてでこんなにうまく踊る子は滅多にいませんもの。さすが、奥様の娘ですね」

「ふふ、リリィ自身がすごい子なだけよ」


 椅子に座って私のレッスンを見ていた母様が立ち上がった。


「見てて、そのステップは、こうすればいいのよ」


 ふわり。

 体を翻した瞬間、母様の体から重力が消えた。

 軽やかに、優雅に。ふんわりマシュマロボディが嘘みたいに舞う。

 その姿は、まるで妖精が踊っているみたいだった。


 小夜子として、テレビやネットでいくつものダンス動画を見たことがある。その中には、世界で一番のダンサーと言われていた人のものもあった。

 でも、今の母様はそんな人たちよりもずっと綺麗で、ずっと上手だった。


 ええええええ、母様って何者?!




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