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どうして青春時代に見た漫画やアニメに惹かれるのか

作者: 山田マイク


 人間は中高生のころ、いわゆる青春時代に見たり聞いたりした漫画やアニメ、ゲーム、音楽を生涯愛し続け、のちにどんなものを見てもそれらへの愛情を超えることはない、と言われています。

 つまり、人は生涯、十代に経験したサブカル体験を越える作品に出会うことはほとんど無い、ということですね。

 これは日本人だけではなく世界的に統計を取ってもそのようなデータになるそうです。

 

 ではどうして青春時代に見たサブカルチャーがそんなに心に突き刺さるのか。

 それはまず第一に「世の中の道理が分かり始めたころに、最初に出会った文化だから」ということが大きいと思います。

 初めて触れたものの感動というのは強烈ですから。


 しかし、それとは別に、もう一つ僕が個人的に思うことがあって。

 青春時代に出会った漫画を今見たときに感じるワクワク感がどこから来るのか。

 それを自分なりに分析すると、あの頃の自分は「こういう世界があったらな」と本気で憧れてたからだと思うんですよね。


 そうはいってももう中学生ですから。

 当時の僕もこの世界に魔法や妖怪、異能者や超能力者なんてものはいないと分かってます。

 でも、1%にも満たないほんの小さな欠片だけ、頭のどこかで。


「もしかしたら本当は大人たちが知らない世界があるんじゃないか」


 と感じていた。

 信じていた。

 

 そのことが、ファンタジー世界をよりリアルに、より身近にしていたように思うんです。


 もしかしたら、明日、世界にはモンスターが溢れているかもしれない。

 妖怪が現れてパニックになってるかもしれない。

 それを救うヒーローに自分が選ばれるのかもしれない。


 絶対にないとは思いつつ。

 まだほんの少しだけ、本気でそう思えていた。


 だから面白かった。

 だから没入出来た。


 つまり、漫画やアニメを楽しむには、作品の力だけではなく、読んでる自分たちの力も必要になる、ということです。

 どれだけ非現実のストーリーを信じられるか。

 どれだけあり得ない設定に夢中になれるか。

 それは要するに、


 どれだけ主人公に自分を重ねられるか。


 というところです。


 この能力が、中高生のころというのは最強なんですね。

 大人になるにつれて、漫画やアニメ、ライトノベルの世界を信じられなくなってくる。

 もっと別の価値観に染まっていくようになる。

 そうすると、サブカルチャーを「楽しむ力」が弱まっていくわけです。


 これはもちろん、ほとんどのファンタジー作品が中高生向きに作られている、というのも大きな要因の一つです。

 少年漫画というのは、ほとんどが少年少女が大事な役割を担ってます。

 だから、年を重ねると、登場人物たちに自分を重ねることが困難になってくる。

 30歳を越えたおじさんが美少女たちと世界を救う、なんてアニメは少ないですから。

 大抵のファンタジー漫画やアニメはそのように作られていませんから。


 そしてだからこそ。

 「異世界転生」というジャンルが流行ったのではないでしょうか。

 転生すれば、おっさんはまた少年に戻れます。

 「転生を果たした少年」になら、おっさんでも自分を重ねることが出来ます。

 今生きてるこの世界には魔法なんてないと100%言いきれますが。

 死んだあとのことは誰にも予測不可能ですから。

 そこでなにが起こるか、というのは、まだほんのほんのほんっっっの僅かだけ、「信じる」余地が残っている。


 つまり異世界転生というジャンルは。

 夢を重ねることが困難になった大人に残された、サブカルに自分を重ねるための最後の装置なんじゃないでしょうか。



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