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PULL UP!!

作者: 川里隼生

 俺のじいちゃんは戦争に行った。第二次世界大戦だ。送られたのは南方の島だったそうだ。敵の攻撃や熱病で、多くの日本兵が亡くなったらしい。じいちゃんは日本に帰りたいがために負傷したふりをして帰国してきた。言わば、国を犠牲にして自分の命を守ったのだ。


 俺はそのじいちゃんの判断を非難するつもりは一切ない。当時は日本のために散るのが名誉だったかもしれないが、やはり死への恐怖は誰しも持つものだ。何か大きなものを犠牲にしてでも己の死から逃れたいという気持ちは大いに理解できる。


 コントロールをほとんど失った操縦桿を握り、俺はそんなことを考えていた。まもなくこの旅客機は墜落する。運が良くても不時着は避けられない。機体の後方、つまり客室側から着陸させれば、このコックピットだけでも助かるのではないか。


 逆にコックピット側から突っ込めば、旅客を何人かだけでも救うことができるかもしれない。旅客機のパイロットとして旅客の安全確保は自分の命より大切だという考え方もできる。いや、やはり後ろからいこう。死への恐怖から逃れる自分を、果たして誰が非難できようか。

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