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白魔女 しーちゃん

 しーちゃんは実は魔女なのです。でも、心優しいしーちゃんはその力を村人達の傷を治癒するためだけに使っていました。中でも、生まれつき身体の弱かった少年を毎日のように看病していました。なぜなら、しーちゃんはその子のことが好きだったからです。ですが、彼女の噂を聞いた国の兵がしーちゃんを攫ってしまいました。

 しーちゃんと少年は離れ離れになってしまったのです。

 しーちゃんは村で一番元気な女の子。

 村には、しーちゃんと同い年くらいの少年が住んでいます。生まれつき身体が弱く、歩くこともままなりませんでした。それが、最近では徐々に良くなり、今では走れるようにまでなりました。

 その村には、どんな病も治す白魔女が住んでいるのです。少年以外にも、多くの村人が長く、健康に暮らしていました。

 実は、しーちゃんがその白魔女なのです。

 魔女といっても、人々を困らせたり、悪さはしません。魔女には、黒魔女と白魔女の二つの種類がいます。一般的に、悪さをするのが黒魔女です。それに対し、白魔女は病にかかった人々を助けたり、困っている人に助言を与える存在です。とはいえ、黒魔女の中にも人々に救いの手を差し伸べるものもいると聞きます。

 しーちゃんの噂を聞きつけ、村には連日病を患った人々が訪れました。彼女の治癒は完璧なもので、どんな重い病気でもすぐに治りました。しーちゃんの噂は途端に広まり、ついには離れた国の耳にも入るほどになりました。

 ある日、その国から訪問者が現れました。

 今、国は疫病が広まり大変なことになっていると話します。そこで、ぜひその力を使って疫病から人々を救ってほしいと頼んだのです。もちろん、そのあかつきには国王から直々に褒美が出ると言います。

 しかし、しーちゃんは村から離れることを嫌がりました。その理由に、少年の存在が強くありました。少年の体調がよくなった陰には、毎日、しーちゃんが彼の体を治癒しているからです。少しの間でも、この行動がなくなれば少年の体がどうなってしまうのか、彼女自身もわかりませんでした。

 訪問者に国へ断りの伝達を告げ、帰らせました。

 しかし、次の日、再び訪問者が今度は兵を連れて、無理矢理しーちゃんを連れて行ってしまったのです。

 しーちゃんと少年は離れ離れになってしまいました。



 連れて行かれた国の有様は、想像以上に酷いものでした。

 しーちゃんの周りには、四六時中、疫病患者が救いを求めてやってきました。しーちゃんは寝る間も惜しみ、一人でも多くの人々の病を魔法で治癒しました。足りない魔力の分を自分の寿命で補って。

 しーちゃんが国から解放されたときには、村を出て二十年近くの月日が経ってしまいました。ですが、魔法の力の半分を寿命で補っていたしーちゃんの姿は老婆のそれでした。

 しーちゃんが村に着くと、自分を育ててくれた少し老いた村人たちに歓喜の声が響きました。彼女は肌や素顔が見えないようにローブを着ていましたが、村に来た瞬間に誰だか分かったそうです。

 その中に一人、明らかに背の高い若者がいました。若者は人混みを分け、しーちゃんの前に立ちました。それは、見違えるほど大きくなったあの少年でした。

 端正な顔立ちとは裏腹に、しーちゃんの顔は皺とシミだらけです。思わず、フードを深く被り顔を隠しました。

 こちらが必死で顔を隠していると、少年は「あの丘の上へ行こう」と言いました。そこは、かつて少年としーちゃんが初めて出会い、少年が彼女にしーちゃんと名前を付けた場所でした。

 丘の先にある一本の木の下で、二人は出逢いました。

 仄かに潮の香りが鼻腔をくすぐり、しーちゃんに懐かしさが込み上げてきます。足元の草花が気持ちよさそうに日向ぼっこをしているようです。

 景色は、二人が出会ったときとなにも変わっていません。しーちゃんはあの頃の思い出を浮かべて涙が出ました。すると、その涙を少年が拭ってくれます。そのまま、少年はこちらに正面を向き、言いました。


「僕は、君が好きです」


 それは、しーちゃんにとって夢のような言葉でした。まったく少年に対しても同じように思っていたからです。

 こちらが、どう返事をしようか考えていると、少年が急に走り出しました。しーちゃんの答えを待たずに逃げたのです。

 しかし、しーちゃんにはすべてお見通しでした。少年がこちらの返事を聞かずに逃げた理由を。少年の死期がしーちゃんには見えたのです。

 しーちゃんはとても胸が苦しくなる感覚に陥りました。そして、思ったのです。

 このままでいいのか。と。

 しーちゃんは決意しました。


 逃げる少年を追いかけ捕まえます。それでも逃げようとする少年を無理矢理こちらに振り向かせました。

 そして、自分の想いを告げました。


「私もよ」


 そう言うと、しーちゃんは少年の頬にそっと触れました。ふんわりとして、少し温かい。

 これほどまでに、少年のことを愛おしく思ったことはありません。そんな彼に、しーちゃんは最高の魔法を唱えました。

 瞬間。しーちゃんは猛烈な眠気に襲われ、ついに倒れてしまいました。

 慌てた様子で少年はしーちゃんを抱き締めます。

 もう少年の死期は見えません。安堵と共に、少年の姿を目に焼き付かせます。

 そして、しーちゃんは大好きな人の腕の中で、そっと永遠の眠りにつきました。その表情は、とても幸せに満ちたものでした。

 しーちゃんは村で一番元気な女の子。そして、誰よりも優しい女の子。

 最後までお読み下さりありがとうございます!

 以上の三つの物語で、一先ずこのお話は完結させて頂きます。また、お話が思い浮かびましたら載せさせて頂きます。

 ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少年がしーちゃんの涙を拭ったり、正面を向いてから「僕は、君が好きです」と言ってくれたのがもう最高です。 しーちゃんはそれまでシミと皺だらけの老婆顔をフードで隠していたのに、少年はそのこと…
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