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邂逅

――【宵闇の魔卿】レベル15《シャドウステップ》――


 久々に声を聞いたな。

 何やら、全く違うタイプの魔法を覚えたようだが……。


 俺が考える前に、シビラが近くに来て肩をすくめた。


「あんた、段々と下層のフロアボスに対して余裕出してきてない?」


「偶然だ、偶然」


 今回も、無事に下層のフロアボスまで倒すことができた。

 上層と中層が全く違うように、中層と下層も大きな隔たりがあると感じさせるものだったと思う。

 普通に挑むと、下層のタウロスが召喚されるような状況はどれほど絶望的だろうか。


「ま、実際とっても相性良かったわね!」


 シビラの受け取った答えに、俺は頷く。

 山にあった狼のダンジョンに比べて、倒しやすい相手だったように思う。

 恐らく本来なら、もっと『いつまでも終わらない』感覚を覚え続けるようなフロアボスだったのだろう。


 今回上手くいったのは、偶然に過ぎない。あまり油断しないように気を引き締めないとな。


 ふと見ると、シビラが手袋を外して片手を上げていた。

 分かってるって、やればいいんだろ。


 俺も手袋を外し、シビラの手の平を軽く打ち払うように叩いた。

 大した音は出なかったが、さすがにそう何度も間抜けなやりとりをしたくはないものである。

 それに……恐らく、本番はこれからだろうからな。


 シビラは、倒れて動かなくなったフロアボスに近づき、その牛の頭を象った兜の角を握って、思いっきり引っ張り上げた!


 兜の中から現れた顔は、予想していたよりも意外なものだった。


「タウロス……だよな」


 そう。鎧の中に入っていたのは、明らかにタウロスだったのだ。

 牛頭ごずの魔物が、同じ形の鉄仮面を着けて戦っていたということになる。


「タウロスかと思ってみればタウロスじゃない、と思って調べたらなんとタウロスだった! ってわけ。ホント、いい趣味してるわ」


「何故こんな回りくどいことを……?」


「そりゃあんた防御力上がるからでしょ」


 言われてみれば、当然の話か。牛の形状の顔が入る人間用の鉄仮面などないからな。


 シビラはいつもと変わらず、その角を切り落とし始める。

 部位があれば追加報酬がもらえるとはいえ、ファイアドラゴンの稼ぎもある中で貪欲なものだ。

 これが女神の行動と言われると疑問を浮かべるが、これがシビラの行動と言われると納得するほかない。


 いや、もしかするとこちらが普通なのだろうか?

 シビラ以外の女神をキャスリーンことケイティしか知らない身からしたら、シビラ以外の神がどういう性格なのか、段々と心配になってくるな……。


「下層フロアボス、掛け金も沢山いただけそうでおいしいわね。あーあ、ここが帝国なら遊べるのに」


 ……やっぱりシビラ以外がシビラと同じ性格をしているとか、万に一つもないな。

 そもそもこんな性格のヤツが10人も20人も集まったとして、あの教義の本が出来上がるとか有り得ないだろ。


「どしたの、ラセル。心配しなくても、あんたの分の掛け金もあげるわよ」


「俺は賭け事をする趣味はないし、大前提としてここにポーカーをやってる店はない」


「大丈夫よ、次はルーレットにするから」


 何も大丈夫じゃなさすぎて、乾いた笑いが出てくる。


「それよりも、別の話がある。レベル15、魔法も覚えたぞ。確か……」


「——待って」


 シビラの雰囲気が、急激に変わる。

 フロア内にある階段の上、俺達が最初にいた崖の上を睨み付けながら、一歩二歩と下がる。

 手には、武器。


「《ウィンドバリア》」


 その姿を見て、シビラの傍に立ち防御魔法を使う。

 フロアボスを倒した自分の剣を抜き、同じ場所を見る。




 崖から現れたのは、色の付いた洞窟内部とは思えないほどに光り輝く金の髪。

 全ての男を振り向かせる美貌が、両手に頬を当てて恍惚的な笑みを浮かべながら、俺を見ている。


「ああ、やはり間違いない……ふふっ、ようやく見つけましたわ……!」


 ケイティが、遂に俺達の前に現れた。

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