満月の下で
若者が眠ったと思ったメデューサは、洞窟の出口へと歩き始めた。
その彼女の後を追って、ペルゼウスもまた出口へと向かった。
「まぁ! もう天馬たちが来てる!」
メデューサは嬉しそうに走り出した。
それは目を見張るような光景だった。
美しい満月の夜。頭に無数のヘビをかかえた青白い顔の女性が腕を広げている。
そして、純白の翼を持ったペガサスたちが、きらめきながら空中を駆け、メデューサの元へと降りてきた。
彼女は、その一頭一頭の首に手をまわして頬擦りをしていた。
「寂しかったわ。元気にしていた?」
それをそっと見ていたペルゼウスはとたんに警戒心をなくした。
彼は満月の光の方へ、メデューサと天馬たちがいる方へと歩き出した。
ペガサスたちのいななきに、メデューサが彼の存在に気付いた。
一瞬にして、彼女の表情から笑顔が消えた。
彼がさらに近づくと、天馬たちは飛び上がった。
「来ないで!」
メデューサが叫んだ。
「私を見ないで」
しかし、とうとう彼はメデューサのそばまでやってきた。
メデューサはうつむいた。
ペルゼウスはシュウシュウこちらを見ている無数のヘビたちと目が合った。
「やぁ、シアナ」
驚きで、思わすメデューサは顔を上げてしまった。
そして、ペルゼウスが笑顔で自分を見つめているのに気付き、またすぐに下を向いた。
(えっ……)
メデューサはまた、顔を上げた。
やっぱり彼は笑顔だった。
「どうして……」
ペルゼルスは目をそらそうとはしなかった。
「君の名前は? 教えてくれないつもり?」
「どうして怖がらないの?」
「怖くないから」
メデューサは泣きそうになった。
「僕を助けてくれたんだね、ありがとう」
メデューサは涙を流しながら答えた。
「私はメデューサ」