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囚われの王子様  作者: 君野自由
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story -1 初めまして、私です。

愛嬌って大事だと思う。


a.とんでもない美人だけどとんでもなく我儘でツンケンしたプライドの塊の女性

b.見た目はザ・普通だけどよく笑い素直で太陽のような女性


きっと七割の人はbを選ぶはず。

・・・やっぱり六割にしておこう。



何を言いたいかというと、見た目が良くたって中身が駄目ならそれはゼロ点なのだ。

神様にあまりにも多くのものを与えられてしまい、心が上手く育つことが出来なかったのだろう。

本当に不思議でたまらないのは、なんでそんなに上から目線なんだ。

今の貴女のいる場所は周りからどうぞどうぞと献上されて出来上がった、ぐっらぐらのハリボテ城なのだ。

違法建築の賜物で、数年と持たずに崩れ落ちるのが目に見えている。



フンと鼻息を鳴らして砂利道をあえてジャリジャリと音を立てながら歩く。

私がなぜこんなにも怒っているのかと言いますと、原因はコレだ。


『恋の試練はビール味』とアーチ状に丸文字が並び、ピンク色の背景に可愛らしい女の子と好青年が階段を追いかけっこする様に駆け上がっている、この本。


よく行く図書館の新刊コーナーにあったこのナンセンスな題名に、どうしても好奇心がくすぐられてしまったのが運の尽き。表紙を見ればビールのビの字も分からないような女の子が描かれていて、苺みるくとかレモンとかにしておけよと思いながら気がつけばその本を手に図書館を後にしていた。


私は本は図書館では読まない派だが、それ以外ではどこででも読む派だ。

つまりお風呂の中とか、電車の中とか、公園とか歩きながらとか・・・。

あ、歩きながらの読書やスマホは危ないですよ。ダメ、絶対。

ただ、今回は物語の演出上ということで見逃して欲しい。


いつも図書館の帰りは、行きの二倍近く時間が掛かってしまう。

もちろん上記を考慮した上で黙認してもらいたいが、歩きながらページをめくり周りの音に耳を澄ませながら歩みを進めるのが何時もの流れ。一文読む毎に顔を上げて周囲を確認しては、また物語の続きを読む。

そんな面倒な事しなければいけないくらいなら、早く帰って読む方がよっぽど有意義だという意見には私も激しく同意する。


理解していてもすぐに読みたくなるのは、やはりリアルに無い何かを本に求めてしまっているのだと思う。

非日常に憧れています病。薬は未だ未開発。



そうそう、話がズレてしまったけれど『恋の試練はビール味』の話に戻ろう。

・・・いや、誰も興味ないかもしれないけれど、私はかなり感情移入してしまっている。

だからとても怒っている。


簡単に話すと主人公はぽっちゃりの平凡女子でジムのトレーナーに恋をするんだけど、そこに社長令嬢の美人なツンケンが現れて邪魔したりとか嫌味ばっかり言ってくる。ご両親のお陰で今の生活があるのに、もうすっごく嫌な奴なの。まだ読んでいる最中だからどうなるかは分からないけれど、このアヤっていう人が嫌いで嫌いでしょうがない。



昔からアニメやドラマ、小説なんでもすごく影響されやすいのは自覚している。

恋味(略してみた)をバッグに几帳面に入れて、今の気分は、


「金持ちで容姿端麗の苦労知らずなんて、タンスの向こうの異世界にでも行って貧困に喘ぎやがれ」である。



やったこともないジャブの動きをシュッシュと言いながらやってみる。

何時もあえて人通りの少ない裏道を通って帰るため、今日もすれ違った人の人数はたったの三人だった。なので、こんな住宅街の道の真ん中でなんちゃってボクサーをしてみても誰に見られる事も無い。


気付けばいつの間にか自宅マンションの前に着いていた。

三段しかない玄関ホールの階段を勢いをつけて一歩で飛び上がる。


チラシしか投函されない無意味なポストを癖で確認してしまう。

今日も水漏れ安心のマグネットタイプのチラシと、とても魅力的なピザのチラシが乱雑に入っていた。自分のとこのチラシなんだから、こんなクシャっとせずに大事にしてあげたらいいのに。


チラシのシワを伸ばしながら玄関ホールを進み、階段を上がると目の前にある真ん中の203号室が私のホームである。


鍵を差し込むとドアの向こう側から、カチャカチャと何かがせわしなく当たる音がする。

音の犯人のことを考えると自然と笑みがこぼれる。


カチャンと鍵の開く音と同時に「オウ」と声がした。


私の大切な大切なダーリン。

何時も私の帰りを心待ちにしている愛しいダーリン。


ドアを開けると勢いよく飛び出して来る白い生き物。


立ち上がって褒めてと抱き着いてくるその姿は、愛くるしくて仕方がない。

なんとなくお解りかもしれませんが、初めまして。


愛犬の白丸くんです。



犬と言えば、柴犬とかチワワとかブルドッグとかポメラニアンとか様々な犬種がいる。

独身の女が犬を飼ってしまうなんて、終わりだなと思われていたかもしれない。

今思えば、ペットショップの店員さんの笑顔は実は嘲笑だったのかもしれない。

だが、そんな被害妄想もすっ飛んでしまうくらい、うちの白丸は可愛いのだ。


ペキニーズという種類をご存知でしょうか?


ちなみに私は知りませんでした。


お時間のある時に是非調べていただきたいのですが、ブサ可愛好きには堪らない顔をしている。

うちの白丸は、名前の通りフワッフワの真っ白な毛に大きな目。

潰れた鼻は近くで見るとゴリラのようで、10秒に一回は鼻水を飛ばしてくる愛くるしさ。


家の中でもずっと後ろを付いてくる上級レベルのストーカー。

朝は私のお腹の上で突っ伏して、私の顔面に手を乗せて蹴伸びをしてくる。

完全に舐められているが、それも許してしまうというダメ親っぷり。


そんな白丸とはもうすぐで二年の付き合いになる。



長々と独り言を呟いてきましたが、ご挨拶遅くなりまして申し訳ありません。


山元渚、やりたい事があってこの度晴れてニートになりました。

以前にも増して立派になったこの我儘ボディと、常に気合の入ってないファッションセンスが相俟って彼氏いない歴更新中です。


大好きな本に魅了されて早24年。

ずっと興味のあった、読む側ではなく書く側に転じようと心機一転知らない土地に引っ越してきました。


愛する白丸と一緒に新しい人生始めます。





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