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学園生活の始まり

私、リリエッタ・クラリエンスは転生者である。ついに学園生活が始まってしまい怯えている臆病な人間でもある。


結局、こうして入学式が始まり、学園生活が始まる今の今まで、マリーに会うことはおろか、手紙の返事だって来ていない。


 兄様には手紙が来ているから、手紙の中身は見せてもらえないが、マリーがどんな風に過ごしているのかは何となく知ってはいる。だが、マリーに呼ばれてよく男爵家に会いに行っている兄様とは違い、私はマリーが実際貴族としてどう過ごしているのかを見れているわけではない。


 本来ならば貴族の先輩として、少しでもアドバイスをしたり、一緒に作法やマナーについてこれはいらないでしょなんて愚痴を言ったりなんかして仲を深めるチャンスであったのにその機会が訪れることはなかった。


 あと、マリーから手紙が来るたびに私を見てにやにやしていたり、会いに行くときに必ず報告をしに来る兄様に非常に腹が立つ。いちいち自分とマリーの仲の良さをアピールするようなその行動を見せられると、一発顔面に張り手を入れたくなる。…そもそもの身体能力の差がひどすぎて物理的に不可能なのだけど。


 そんなことはひとまず置いておいて、今は入学式に集中する。


 入学式とは言うけれど、それは学生だけの社交界の場に近くあちこちでいろいろなグループが楽しそうにおしゃべりしている、年上の先輩たちも参加しており、歓迎会も兼ねているのだと思われる。


 私は、真っ先にマリーを捜し始めるのだが、侯爵令嬢という身分がある以上話しかけてくる先輩や他の貴族の子女たちを邪険にすることもできない。何かと便利なこの身分だが、こんな時ばかりは恨めしい。


 結局、私がマリーを見つけられたのは入学式がそろそろ終わろうかという時間だった。


 順調に恋愛対象となる人物たちと入学式で出会っていたようで、騎士であり学園の入学式とは関係ない兄様を除いた、恋愛対象者たちが、マリーの周りを囲んでいた。


 前から可愛らしい容姿はしていたのだが、しばらく見ないうちに成長していたマリーはその可愛らしさに一層の磨きをかけていた。男子たちが一目ぼれしてしまうのもうなづける可愛らしさだ。貴族の子女になったことで、使えるお金が増えて、美容や服装などにも気を遣うようになったのだろう。というかそのあたりも貴族の子女のマナーとして教えられるものであるから、貴族となったマリーがさらに可愛らしくなるのは必然であったと言わざるをえない。


 意気揚々と私もマリーに話しかけようと足を向けるが、間の悪いことにその時ちょうど入学式は終わってしまった。


 私たちをこれから使うことになる教室へと案内しようとする教師陣を無視するわけにもいかず、結局マリーに話しかけることはできず教室への移動を開始した。


 移動を始めてすぐに気が付いたが、私とマリーは別のクラスであるようだ。これの何が残念かというと、この学校はかなり広い敷地にいくつも棟が立っており、一つの棟を一クラスが使用する。つまりクラスが違う時点で会いに行くのに広い敷地の中に建つ別の棟まで行く必要がありとても時間がかかってしまうのだ。頻繁に会いに行くことは難しいだろう。


 なんて、そんなことは分かっているが、せっかく学園生活が始まったというのにマリー話せないのは悲しいので、教室のある棟までの案内が終わった直後に、マリーのいるクラスの別の棟へと足を向ける。


 正直、入学式や教室への案内で広い敷地を歩いたりしたので若干すでに疲れてはいるのだが、それを押してでもマリーには会っておきたい。手紙の返事の一つも返してくれなかったことに文句を言わなければならないし、再会の喜びを分かち合うこともしなければならない。


 ようやくマリーの所属するクラスが使用する棟へとたどり着き、中へと入る。構造自体はどの棟もそれほど大きな違いはなくてすぐに教室の場所も分かった。が、教室の中にすでにマリーの姿は無かた。


 教室に入ってすぐのところに座っていた少女にマリーがどこに行ったのか聞いてみよう。


「すみません、お尋ねしたいことがあるのですが。」


「これはリリエッタ様!わざわざ別のクラスまでお越しになるとは!私に分かることでしたらお答えさせていただきます。」


「ありがとうございます。私、マリー男爵令嬢に用があるのですがどこにいるかご存じないでしょうか。」


「マリーさんですか。…先ほど慌てて教室を出ていかれましたがすれ違いませんでしたか?」


 私はごくごく普通に教室まで歩いてきたが、マリーとすれ違ってなどいない。構造上そんなに急いで出て行ったのならすれ違ったことに気付かないなんてまずありえない。


 ではなぜ、気付かなかったのか。


 マリーが慌てて出て行ったのは私が来たことに気付いたからであり、すれ違わなかったのは私が教室に入るまでどこかそのあたりに隠れていたから。


 そんな、嫌な、想像が、頭をよぎる。


 嫌な汗が背中を伝う。


「リリエッタ様?少し顔色が悪いようですが…。」


「…いや、大丈夫です。それでは私はマリー嬢を捜しに行きますので。ありがとうございます。」


 教えてくれた少女にお礼を言いつつ教室を後にするが私の頭の中はマリーのことでいっぱいだ。


 …嫌われてしまったのだろうか、何かしてしまったのだろうか。


 今まで仲良くなろうと努力してきたのは無駄だったのだろか。


 どうやら私の学園生活には暗雲がたち込めているらしい…。

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