裏のお話・忠誠は命より重い
設定だけ考えて書いてなかったので、時系列は最初期の方の物です
聖女を覚醒させるために私の娘を利用する。その王命を聞いた時、目の前は真っ暗になった。いくらクラリエンス家が王家の懐刀としていかなる汚れ役も被ってきたとはいえ、実の子供を生贄に差し出せと言われてうなずける親はいない。
大切に育ててきた娘なのだ。
だが、長年続く由緒あるこのクラリエンス家を私の代で潰すわけにはいかない。私ができることは、私が聖女の覚醒を促すように動きつつ、とにかくリリエッタを守ってやるだけだ。すべての汚名は私が被ればいい。
「王よ、聖女を覚醒させよとの命、確かに承りました。しかし、私のような汚れた家の出身とはいえ親は親。みすみす実の子を生贄に捧げろと言われてもできるはずもありません。私が全ての罪を被りましょう。聖女に与える試練の一切を私が引き受けます。ですから、私の娘は陛下の庇護下に置き最大限の配慮をお願いできませんでしょうか。」
「…おぬしの言うことも最もではある。いいであろう。そなたの娘、リリエッタといったか。その娘第一王子の婚約者としよう。最終的に王妃にならずともある程度の庇護は出来よう。ただし、おぬしの娘が万一にも聖女に対して無礼を働いた時、儂は必ず庇ってやるとは断言できん。この国の最重要人物はもはや王族ではなく聖女であることゆめゆめ忘れるな。」
少しでも、リリエッタを守れるチャンスが得られるのであれば私はどんなことでもしよう。私の犠牲で反逆罪を免れ、家族を守れるなら安いものだ。
「して、その聖女なのだがな、スラム街の娘らしい。現聖女への女神からの啓示である。スラム街に現聖女とともに赴き、探し出し、そのままお主の家の使用人として雇いあげるのだ。現聖女の体調は芳しくない。時間をかけるのは構わんからくれぐれも無茶をさせるようなことはしないでくれ。」
聖女様が女神様に祈りを捧げることにより現れる女神結界。この国はその結界により悪意あるものから王都を遠ざけているために平和を保っていられる。絶対的なものではないが、この結界がなければ周辺諸国から戦争を仕掛けられ平和は崩れてしまうだろう。だからこそ聖女は絶やすことは出来ない。いくら精強な軍部が存在するとはいえ民が危険にさらされることは事実なのだ。
「それでは頼んだぞアイリーン。期待しておる。」
謁見の間より下がった私には一人で愚痴をこぼすくらいの力しか残されていなかった。
「ノブレス・オブリージュ…か。厄介なものだな…。」




