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ヒロインさんとの出会い

【2020/8/21書き直し】

 私、リリエッタ・クラリエンスは転生者である。ついでに悪役令嬢というやつでもある。さらには乙女ゲームの修正力というやつを甘く見ていたお馬鹿な人間である。


 お父様に話をして、お母様にも話を繋いでおいたはずなのにあれよあれよという間にポンコツ王子の婚約者になってしまっていた。いや、本当になんでこんなことになっているのかわからない。お母様が若干顔色悪そうにしてたから王様からの命令とかだったのかもしれない。家庭教師とかの前でそんなに優秀な成績を見せた覚えもないし、一体全体なんでこんなことになったのやらと首をかしげることしかできない。


 とはいえ決まってしまったものは仕方が無い。ポンコツ王子といえども王族だ。今更こちらから婚約破棄を願い出ることは不可能だ。そんなことしたら悪役令嬢断罪イベントの前に首が飛んでしまう。


 というわけで、私のバッドエンドフラグを叩き折るための方法は一つになってしまった。その方法とはヒロインさんと仲良くなっておくことだ。。そうすれば、ヒロインさんにポンコツ王子を押し付けつつ死亡フラグを回避することが出来る。本来であれば嫉妬に狂い恋の邪魔をし続ける私も、別段ポンコツ王子を何とも思っていないのだから嫉妬心なんて湧き上がるわけもない。よくよく考えてみればこっちの方が確実な方法かもしれない。題して仲良し大作戦。


 さて、記憶違いでなければ私の8歳の誕生日、まあ明日なのだが、その日に侍女見習いとしてヒロインさんが我が家にやってくるはずだ。乙女ゲームのストーリーではこの時から自分より可愛いとかいう理由でヒロインさんをリリエッタはいじめ始めるわけだが、正直訳が分からない。自分で言うのもなんだがリリエッタはキレイ系だ。何なら男装してもよく似合う程度には中世的な顔つきをしていてまだ幼いのに氷のような冷たさを感じる顔つきだ。完全にお母様の血筋だ。対してヒロインさんは小動物的な、守ってあげたくなるような可愛い系だ。全然タイプが違うし、比べられるようなものじゃない。ああ、リリエッタはそういうところが気に食わなかったのかもしれない。


 さて、ヒロインさんと仲良くなるために努力するつもりではあるがどうするべきか。乙女ゲームの修正力の恐ろしさを味わったので修正力が効かなくなるくらい仲良くなっておかなければならない。具体的には唯一無二の親友、ぐらいの刷り込みをヒロインさんにすることが必要に思う。方法としては、まずヒロインさんを私の専属にしてもらえるようにお父様に頼み込む。これは同じくらいの歳の友達が欲しいとでもいえばいいだろう。後はこまめにお茶に誘ったり、出かける時は必ず連れて行ったりとかしよう。


 まさかとは思うが万が一ヒロインさんが転生者だった場合のことも考えておかなければならない。インターネット小説ではまれによくある設定だが自分に降りかかる可能性があると思うと苦笑いしか出てこない。仮に転生者だったとしても話の通じるタイプの人間だったらいいが…。


 今からそんなことを考えたところで仕方がない。当日は探りを入れつつ、転生者ではなさそうなら私専属の使用人にしてもらえないか聞いてみるとしよう。転生者だったとしても…まあ、なるようになるだろう。


 私の誕生日当日。予定通りにお父様が新しく侍女たちを連れてきた。今更ではあるが1人だけスラム街の出身ということもあり、微妙に浮いている。周りがある程度良家の出身だし、一人だけ年齢が幼すぎる。違和感が大きい。


「わ、私、マ、マリーと言います。8歳です。よ、よろしくお願いします。」


 もちろん浮いている中には天性の可愛げというものもある。さほど手入れしていないだろう髪もつやつやだし、肌だって白くて綺麗だ。こう言ってはなんだが、努力して可愛くなろうとしていたリリエッタが嫉妬するのもわからなくもない。


「ねえあなた。そうマリーあなたよ。あなたは転生って信じる?」


「転生ですか?」


 一切の動揺は見られずなぜそんなことを聞かれたのかの疑問しか浮かんでいないようだ。これで本当は転生者でしたなんて言われたら拍手を送りたい。奉公先の娘に突然転生云々言われて驚かないのはタヌキすぎる。おそらくヒロインさんは転生者ではないのだろう。


「ねえ、マリー。私名前はリリエッタだけど普段はリリーって呼ばれてるの。私たちの名前なんだか似てるわね。どうかしら、私と友達になってくれない?」


「私がですか!?いえ、嫌とかじゃなく驚いてしまって。是非お願いします!」


「ふふ、よろしくねマリー。…ねえお父様。私マリーを専属の使用人としてそばに置きたいのだけれどダメかしら。」


「その子は侍女ではなく侍女見習いだぞ?仕事はそれほどできないが。」


「構いません。私は侍女というよりも歳の近い友達が欲しいのです。…駄目でしょうか?」


「いや、構わんよ。ただその子の教育のためもう一人こちらで侍女をつけさせて貰うからな。」


「はい。わかりました。」


 うまく私の手の中にヒロインさんを収めることが出来た。お母様はなぜか若干苦い顔をしていたが気にする必要もないだろう。全てはヒロインさんと仲良くなって生き残るため。ヒロインさん、悪いがポンコツ王子は押し付けさせてもらうぞ。


 私は絶対に老衰で死んでみせる。

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