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閑話~そんな夢~

 目の前に、リリー様の顔がある。


 唇と唇が触れあって、リリー様が私の口の中に舌を差し込んでいる。


 情熱的なキス。それもリリー様が私に向かってしてくれている。


 一瞬で理解した。これは夢だ。リリー様は私のことが好きと言ってくだせるけれど、リリー様の好きと私の好きは違うものだってちゃんと理解してる。だから、これは浅ましい私の欲望が見せた夢。


 夢だからなのか、頭がぼんやりして上手く働かないからすぐには思い出せなかったけれど、私は今誘拐されているんだ。


 リリー様が目の前にいるはずもない。


 夢だと言うのにキスは気持ちよくて、リリー様の舌がぐちゃぐちゃと私の口の中を嬲ってくる感触がリアルで、ただでさえぼんやりしている意識がとろけてしまう。


 夢だからと、感触を楽しんでいたらリリー様が私から口を離した。


 見えたのは一瞬だけだったけど、私の舌とリリー様の舌に唾液の橋がかかっている光景はもう一生忘れられないだろう。


 それだけ、扇情的で強烈な光景だった。


 これが現実だったらいいのに。


 夢だとよくあることだけど、気が付いたら場面が変わっていた。


 私はリリー様に抱きかかえられている。所謂お姫様抱っこというもの。とっても大事そうに私を抱えてくれるリリー様は、女の子で綺麗なんだけどかっこよくて私の眼には王子様みたいに見えてしまう。夢の中だから余計になのだろうか。


 私が心地よい夢から目を覚ますとそこは学園の治療室だった。


 貴族の子女たちが通う学園だから、並みの治癒院よりも良い薬品や治療道具がそろっているためここに運ばれたのだろうと思う。


 私の世話をしていてくれた人がいないタイミングで目を覚ましてしまったのか治癒室には寝ていた私以外誰もいない様子だった。


 そっと、自分の唇に触れる。


 夢だとわかっているのに、そこにはまだリリー様の熱が籠っているようなそんな気がしてしまう。


 きっと私の計画が成功したところで夢のようにリリー様から私を求めてもらうことなんてできないだろう。だってこの計画はリリー様の気持ちなんて何も考えていない私のエゴの塊のような計画なのだから。


 リリー様が王子を苦手としている、それだけが少しだけ私の罪悪感を薄めてくれる。


 今はもう一度あの夢の続きを見られることを願って目を瞑ろう。

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