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悪役令嬢誕生

【2020/8/21書き直し】

 私、リリエッタ・クラリエンスは転生者である。ついでに悪役令嬢でもある。所謂、乙女ゲームというやつに転生したわけである。きっと喜びの声を上げる人の方が多いのだろう。上手くやれば見た目麗しい攻略対象キャラのルドルフ・アッセルレント王子と結婚し豪華絢爛な生活を送れるのだから。


 しかし、しかしだ。考えてもみて欲しい。この中世ヨーロッパ風の世界は絶対王制である。王子と結婚なんてしたら王妃にならなければいけなくなってしまう。そんなの無理だ。この世界で生まれた身も心も貴族な人達ならまだしも中身が一般市民の私ではとても無理だ。絶対に耐えられないし必ずどこかでボロが出る。


 さらに言ってしまえば王子の性格も気に入らない。いろいろな女と浮気する遊び人だし、自分は何もできない人間だからこうして遊んで失脚した方がいいんだと自分の行いを正当化するし。いや正確にはなんの能力もないというわけではない。突出した傑物として開花する才能がないため何となく器用貧乏で、それを気にしている影のあるキャラクターなのだが…。結果的に「俺は人をまとめる力があるんだ」とか言い出すけど担がれてるだけだと思うぞ、それ。


 つまりはそんなポンコツな王子と結婚などまっぴらごめんというお話なのである。よし、これからやつの事はポンコツ王子と呼ぼう。不敬罪で首が飛ぶから口には出さないけど。


 そんな王子との結婚を回避するためには乙女ゲームのストーリー通りに行動するのが一番手っ取り早い。何故ならヒロインに惚れた王子が私に婚約破棄を突きつけて来るからだ。だが、この方法には問題がある。婚約破棄と同時に悪役令嬢断罪イベントが始まってしまうのだ。比喩抜きに首が飛ぶ。断頭台でスパンと。


 ヒロインさんはこの国の最重要人物である聖女だから後の禍根を残さないために仕方のないことなのかもしれないが、好きな男を奪われないように努力したらはい処刑ってあんまりにもあんまりだよなぁと同情を禁じ得ない。自分がその立場なんだから笑ってもいられないのが辛いところではあるが。


 幸いにもまだ、私とポンコツ王子の婚約は行われていない。このままポンコツ王子と婚約しない方向でいけば断罪されることも、王妃になることもない。というか、ゲームのシナリオに関わらなくてすむのだ。よし、私はこれからお父様にお願いしてポンコツ王子との婚約を回避し、悠々自適な生活を手に入れよう。


「お父様。リリエッタです。少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」


お父様はいつも昼頃には自分の書斎にいらっしゃるからきっと今日もいるはず。


「リリーか。いいぞ。入りなさい。」


 ものものしい書斎のドアを開けばやたらダンディーでイケメンなまさしくできる男という風貌のお父様が椅子に腰掛けてこちらを見ている。お父様は入り婿で基本的な執務は行っているがそれほど発言権が強いわけではない。だが全くないわけでもないし自分の娘…つまり私には途方もなく甘いのだ。きっとささやかな願いをかなえるために粉骨砕身してくれるに違いない。


「それで、どうしたんだねリリー。私に話とは。」


「はい。私の婚約者の件なのですが...。」


「ふむ、婚約者にしたい人でもできたのかい?」


「いえ、違うんです。その逆です。この人だけは絶対に嫌だという人ができたのです。」


「ほう...、リリーが私に直談判するほど嫌がる相手とは...。いったい誰なんだい?」


「はい、第一王太子のルドルフ王子です。以前遊び相手としてお会いした時からどうにも苦手で…。悪い方ではないと理解はしているんですが、ちょっと…」


「なるほどね。まあ、可愛い娘の頼みだ。王子から縁談の話が来ても断っておくよ。」


「ありがとうございます。」


お父様愛してる。ほんとに愛してる。これで王子と婚約する可能性は限りなく低くなった。城の方に出かけているお母様だって多少冷たい部分はあるが私を愛していないわけじゃない。可愛い娘の婚約が嫌だという我儘くらい聞いてくれるだろう。結婚したくないと言ってるわけじゃあるまいし。


そう思っていた時期が私にもありました...。

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