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火星花嫁  作者: 猫又
第一章 伊織と海賊
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伊織、宇宙へ行く

「パスポートは入れたし、着替えも入れた。財布もいれた、カメラもある。もう忘れ物ないかな」

 私は三度目の荷物の点検をして旅行バッグのファスナーをしめた。

 私は明日から火星に行く。

 何と言っても地球から出るのは初めてだし、ただもうわくわくするばかり。

 多分一生で一度の地球脱出だろう。


 宇宙旅行が頻繁に行われるようになり、地球人口は四割がた減少した。安く手にはいるチケットは片道キップであり、地球政府はアウトワールドへの移住を奨励した。

 人口は減少し、様々な問題は解決へと向かうかに見えたが、結果は以前にもまして地球が高齢者の星へとなってしまっただけであった。そして医療技術、延命技術の進歩、代用臓器の開発。

 

 幼い時、病弱で入退院を繰り返していた私は思春期のほとんどを空想と書物の中で過ごした。宇宙へのあこがれは人一倍あったが、自分ではとうてい出て行く勇気などあるはずもない。そして周囲も男はいいが女は地球で子供を生む事を望んだのである。

 三泊四日の小旅行をどんなに心待ちにしてもバチはあたらないだろう。

 それにこの旅行が終われば、私は結婚が決まっていた。

 親の選んだ相手と式をあげて夫婦になる。

 周囲はものすごく祝福してくれている。

 私が嫁ぐことによって父親の会社の安泰が約束されたからだ。

 すべての技術が進歩し宇宙規模での貿易が始まり、地球は裕福な星になった。

 だが格差社会でがちがちに固まってしまった日本。その中で小規模の町工場の貧乏な娘が日本でも有数の金持ちで二十も年上のしっかりした男に望まれて嫁ぐなど、幸せの極みにいるはずだ。


 いないはずがない。


 私はこの火星旅行でささやかな望みを叶える。

 二十三歳の今まで、例えばわくわくするような冒険旅行をしたい、とか、初めての場所へ行ってみたい、とか、もの凄く誰かを好きになってみたい、とか、そんな事を望んで生きてきたのに結婚すればすべてが無理になりそう。

 日本の金持ちは宇宙旅行をしない、のが本当かどうかは知らない。

 ただ私の結婚相手はしないと仰る。

 宇宙で一番美しい星は地球、中でも美しいのは日本、らしいので。

 私は最後に宇宙旅行をするのだ!

 一人の女の子が宇宙へ出るなんて宇宙旅行会社で格安のツアーで行くしかなかったが、それは私にとっては一生の宝物になるだろう。

 本城伊織、二十三歳、きっと素晴らしい旅行になるはず!

 

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