アジトの破壊
夕方になりました。いよいよ、盗賊のアジトに踏み込みます。
ところで、ヒャトはどこでしょう?
きょろきょろ探してみてもいません。あれれ!?そういえば、交代で休憩していた時も見なかったような気がします。
「偵察行ってきたぞ」
何時の間にか背後にヒャトがいました。どこに行っているのかと思ったら、偵察に行って来てたのですね。そういえば、ヒャトは斥候です。行き成りみんなで突入ってわけなかったです。
こうなるとわかっていたら、弟の卓也に進められたゲームをやっておけばよかった。それに、妹の幸恵のお薦めラノベも読んでおけばよかったです。でも、どれも今更です。
思い出してみれば、武術しかしてなかったのは私だけのような・・・。いや、私の場合はちょっと普通のとは違いましたし・・・毎日の生活の中での精神的なダメージが酷かったですし。しょうがないですよね?
さて、ヒャトが地面にアジトの概要を描いて説明をします。
「まず、入っていくと直ぐに二つに分かれている。右に進むとさらに二つに分かれている、その右が盗賊たちの部屋、左が盗賊の頭の部屋でそのさらに奥が奪った物を入れる倉庫のようだ。最初の別れ道の左に行くと、食堂部屋。奥に簡易の台所の様な物と、食材を入れてある倉庫。その倉庫に隠し扉があって、その先に檻に捕まった女性や子供がいた。女性が8人、子供が3人」
「残った盗賊はどこにいる?」
「入口に2人。食堂に3人。檻の前に1人。部屋に4人だ」
「入口の2人は、ヒャトに頼む。その後、俺とガイは右の盗賊の部屋に向かう。ヒャトとサアラとイリーナは左の食堂と檻の捕まった人たちの救助を頼む」
「「「了解」」」
「さてと、まず入口の奴らをさくっと殺りますか」
ヒャトが、腕を鳴らしながら、すぐそこのお店で買い物をするかのように言います。その瞬間見え無くなって、気が付くと、洞窟の入り口にいた二人はご臨終していました。
速いです。斥候って凄いですね。
そして、私は置いてきぼり。まずいです。慌てて追いかけます。
洞窟の中は、意外とほんのりと明るかったです。不思議です。
「何きょろきょろしてる。あんまりチンタラしてたら置いて行くぞ」
「ごめんなさい。洞窟の中なのに意外に明るいなって」
「ああ、こういう洞窟には発光苔が生息していることが多い。ここもよく見ると発光苔がいたるところに生育している」
ヒャトが物知りなのは、斥候という職業柄でしょうか?
それに、わりと面倒見がいいお兄ちゃん系?
疑問に思ったことは、全てヒャトの解説付きで教えていただいているような気がします。この世界の初心者にはありがたい取説のような人ですね。本当に助かります。
「そろそろだ。準備はいいか?」
「O.Kよ」
「解りました。大丈夫です」
せーので突入です。でも、ヒャトとサアラで瞬殺です。私の出番一つもありません。これって私が居る意味があるのでしょうか?
確か、私って主人公ですよね?
こういう異世界転生物のお約束としては、主人公が無双してヒャッハ~!!って悪者をやっつけて、周りが主人公だからしょうがないってなるんじゃないのでしょうか。
私これでも前世は柔道の大会で全国優勝だってしたことがあるんですよ。
今は、念願の女の子だけど、しっかり戦えて、そこそこ強いはずです。
私の憧れは、可愛く魔法を唱えて戦う、アニメなんかにもある某魔女っ娘です。
けれど昨日もマンティコラを倒したのはダイアンたちで、私がしたのは盗賊たちに水をぶっかけただけ。非常に残念です。
女神様から、新たに魔法全部使えるようにしていただいて、さらにチート主人公に昇格したはずなのに、現実は厳しいですね。
隠し扉の先の敵も、私が何をするまでもなく終了しています。
私は、二人の後をついていっただけで終わりました。
無念です。洞窟の隅でのの字を書いていいかしら。
「イリーナ。そんなとこで何しているのよ」
「いえ、私の事はお気になさらないで」
「冗談言っていないで、何か着るもの持ってない?」
着るもの? なんで?
サアラの視線の先に居たのは、鼻血ぶーのボインな裸体。
そういえば、盗賊に捕らわれていた人たちがいたのでした。
でもなんで、裸なの!! 目のやり場に困っちゃうじゃないの。
「何真っ赤になっているのよ。同じ女の子同士じゃないの」
すみません。ごめんなさい。許して~。
私は元々女の子として生まれたかったけど、男の子として生きてきたの~。
だから、女性の裸に免疫がありませ~ん。
サアラは、レズなんでしょう?
なんでそんなに平気な顔をしていられるの!!
「ああ、イリーナはここまでプロポーションがよくないからな」
ちょっと、ヒャト!! 言っていいことと悪いことがあるのよ!!
ばしゃ~ん!! かーん!!
ヒャトの上に昔のリバイバルで見た、大きな金タライが大量の水と共に落ちてきた。これは、いったいどこから?
『ふん!! 天罰です』
女神様ですか。そういえば、今の私は、女神様の好みで作られたものです。そりゃ、自分の好みを貶したとして、天罰が下されても可笑しくありませんね。ヒャトの自業自得です。
「いたー。これは、どこから? もしかしてイリーナの魔法か?」
「いいえ違います。天罰です」
「それって、お前のだろう!!」
「違うよ。イリーナからは、魔力を感じなかったもの」
「サアラか?」
ヒャトが、ゆっくりみんなを見ていきますが、当然みんな首を横に振ります。
「それより、彼女たちの服です」
私は、空間魔法で女神様から頂いたゴスロリの服を適当に30着ほど出しました。(どうせなら好きなのを選べるように多めにした)
「えっと、お好きなを着てみて下さい」
彼女たちは、おずおずと手に取ってみるけど誰も着ようとしません。なぜでしょう。この服、お気に召さなかったのでしょうか?
「あの。こんなお姫様の様な服、私たちには勿体無くて・・・」
ああ、そういうことですね。
「大丈夫です。私も着てますが、お姫様ではないですよ。それに服は着てくれる人がいて初めて存在意義が満たされるのです。皆さんが着てくれなくて、きっとこの服たちは悲しい思いをしていますよ」
そういって、1人に無理やり着せちゃいました。その人はあまりの着心地に、目がトロンンとなっちゃいました。
「すごーい。とってもよく似合っているよ!」
同じく捕らわれていた小さな男の子が褒めたので、そのままなし崩し的に他の人も着てくれました。
女神様も、きっと喜んでくれるはず。
『当然です。ゴスロリ服を着た女性がこんなに、幸せです』
こんな状況だけど、女の子同士で着せ替えです。
ああでもない、こうでもないと、いろいろ試していると、呆れたヒャトが子供たちを連れて出ていきました。
いいじゃない、私の夢の女子会です。




