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 晴れて気持ちがいい。


 滞りなく葬式が終わり、葬列を組んで墓まで歩く。家紋が染め抜かれた黒い旗を掲げ、風に靡くのを確認しながら。この風に乗って馗綯はどこかに飛んでいく。


 先頭を行く自分の隣を結衣子が、一番後ろを凛と葎が歩き、お菓子や小銭をばら蒔いていく。子供らの黄色い声が青い空と黒い旗に揺らめいた。実家にいた葎の二人の子供も連れてきて、彼らはあっという間に樫鉦の子供らと仲良しになった。一所懸命、お菓子を拾っていた。


「昔、俺たちがああだったな」

 馗綯が入った棺桶を担いでくれているタカシが言うとみんなが笑った。みんな来てくれた。馗綯のために、自分のために。


 これを今度は自分が還していく。


 場所も違うし、やり方も馗綯らとは違うが、少しでも笑ってくれる人が増えるといい。


 そんな風に生きていきたい。



 墓は既に棺桶の大きさに掘られていて、そっと馗綯を下ろしていく。順番に土をかけてから、タカシらが埋めてくれた。墓標は十字架だった。キリシタンの流れを組むと言っていた気がする。本当だったのか。


 みんながばらばらと帰るのを見送る。


「結くん、行こうよ」



 歩きだした結衣子を引き留める。

「なあに?」


 前もって書いておいたカードを開いて渡した。




『俺と結婚してください


 幸せになりましょう』



 結衣子はカードを受け取ると胸に当てた。


「はい、幸せになりましょうっ」


 満面の笑顔がこの青空に負けないくらい、晴れ渡っていて、絶対に泣かせてはならないと誓った。


 母の前で。


 きっと、唯一、出来た親孝行なんだと思う。



 結衣子と手を繋いで歩き出す。

 ずっと同じ道を行く。




                   了




 


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