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「ちゃんと、言ってよね」
「うん」
「約束なのよ」
「分かったよ、早く行けば? バス、出ちゃうよ」
「言わなくて別れるハメになったら、絶対、凛くんのせいだからね」
「知らないよ、そんなの、あた、痛いって」
「もう、お願いだからね」
「で、何があった?」
「言うほどのことじゃない、いて、痛いってば」
「ざけんな。あのな、俺は今、マジで忙しいんだよ。出張も三つも四つも重なってるくらい忙しいの。また、明後日からドイツに行かないとならないし、多分、その足でイタリアだ。口利かないで、人と会わなきゃ、みんな片付くって思ってる凛のお守りをしてる場合じゃないんだよ。だいたい、柚井姫は捕まったのか? ガラス代だけで百万超えだったんだぞ。偉そうに、柚井姫は俺の言うことなら聞くんだとか言ったよな、お前。じゃあ、早く収拾つけろ。こんなとこで、結の看病にかこつけて知らん顔している場合じゃないんだよ」
「でも」
「何がでもだ。バカ。ここにいたって何も解決しないだろうが。いいか、結はこの先、職を失う確率が高い。世間様に背中向けて仕事しても生きていける凛とは違うんだ。結衣子ちゃんはそれを受け止めた。だから、仕事に行ったんだ。お前みたいに逃げたんじゃない、寧ろ闘いに向かってったんだ。一人じゃ何も出来ない凛とは違うんだよ、悔しいなら、ちゃんとしろ。いつまでも俺や葎に頼るんじゃない。それからな、俺はちょっと怒ってる。お前、何で俺にも言わなかった話を、初めて会った結には話したんだ? どういう神経してんだ。聞いたらまずいかなと思って、話してくれるのを待ってる俺の気持ちも考えろ。ああ、無理かな。凛には無理か、ああ、無理、無理」
「はいはい、無理、無、わっ、やだってば、離して」
「さっきも言ったがな、忙しいんだよ、お前はお前が出来ることをさっさと片付けに行け。柚井姫のことは手伝えないからな、ほら、立てよ、行けよ」
「無理、む、が、っ」
「口は利かなくていい、黙って働け」
痛みに身体中が疼く。気を失って初めて眠れる。そんな時間が繰り返し訪れている。うっすら開けた目に映るのは白い天井で長く持たない意識は近くにいる人の会話を挟み込む。
早く凛に心配するなと言ってやりたい。ああして央に叱られて出ていくが、すぐに戻ってくる。結衣子が自分に伝えたい言葉と同じだから分かってくれてるといい。
心配しないでね、アタシいるから。
汗を拭って頬を撫でる結衣子。廿日署に連絡を入れてくれたのも結衣子だった。ただ、話がややこしいので結局、央が直接、署に出向いてくれたらしい。
戻ってきた凛が側に立った。青白い顔で見下ろして。
「っ、っ」
違う、柚井姫だ。長く垂らした髪の毛の隙間からこちらを睨んでいる。
意識がはっきりとした。深く息を吐く。
味気ない病室には誰もいなかった。身体を起こすとギシギシ言う感じがした。きつめに巻かれた首の包帯。




