6 戦うお話、その2.
六話目です。どうぞ。
――マインド・リード。
アークがそう唱えると、頭のなかに相手の思考だけではなく、深層思考、記憶やイド、エゴについての情報が頭の中に流れこんできた。
――相手がゴブリンとはいえ、この数だとなかなかきついな。だが、お前らの行動はすべてこちらの手の中にある・・・!
頭の中にあふれている数多い情報の中から、戦闘に関するものだけを選別していく。思考は加速し、時が止まったように感じる。無限に続くかと思われた時間は、解析の終了により通常の時間軸に回帰する。
(見せてもらったぞ、お前たちの「心」・・・!)
――アークが動きはじめた。突然動き始めた彼にゴブリンたちの反応が遅れる。
次の瞬間、正面にいたゴブリン2体の首が切り裂かれ、鮮血がほとばしる。
驚くゴブリンの顔面には貫手が突き刺さり、仲間を殺された怒りで力任せに振り下ろす棍棒は軽くいなされ、蹴り飛ばされた先に、同じく突っ込んできていた仲間のナイフが腹に突き刺さり、絶叫をあげた。
絶叫におびえたゴブリンを手早く処理すると、うるさい奴を屠り、逃げようとした最後の一体に向かってナイフを投擲、ナイフは後頭部に突き刺さり、脳幹を破壊、最後の一体は完全に沈黙した。
「・・・マインド・リード、解除。・・・あ~、頭がガンガンする・・・」
マインド・リードを解除し、一息ついたアークの目に、向こうの戦闘が終了したのが見えた。
アークがこの場をどう切り抜けようか画策している時、ディンは術式を唱えていた。
「けんげんせよ、『カラドボルグ』」
そう唱えると、ディンの体を白い光が一瞬だけ覆い、光が剣の形をとりはじめ、光は白銀の剣に変化し、
目の前にいたひときわ大きなホブゴブリンに切りかかった。虚をつかれたホブゴブリンはディンの放った一撃をよけきることができず、胸に大きな傷が刻まれる。傷をつけられたホブゴブリンは憤怒し、上段に構えた大剣を振り下ろした。
――完全に入った。
そう思わせるような剣を放ったホブゴブリンの顔は醜い顔を驚愕に歪ませた。
ただでさえ強いホブゴブリンの中でも、さらに大きな個体が放った必殺の一撃だ、これを受け止めることは、鍛えている騎士や冒険者でも難しいと思われる。そんな一撃を、ディンは両手で掲げた剣でしっかりと受け止めていたのだ。もう一度切りかかるが何度放ってもディンにはかすりもしない。
業をきらしたホブゴブリンは、亜人種の魔物の中位種以上が使うことができることのできる、『狂化』を発動し、大地を砕く勢いでディンに躍りかかる。しかしディンは少しも慌てず前進した。
―― 一瞬の交差。
ホブゴブリンの体が数瞬ずれたかと思うと、上半身と下半身に分かれはじめ、切り口から灰になり、さらさらと崩れて行った。
カラドボルグとは、エクスカリバーの原型とされる剣です。
そういえば、エクスカリバーは片刃の直剣らしいですね。
次は明日(12月21日)の予定です。