その3
あれから二十年がたった。
兄弟も大きくなり、
成長し、
ようやく「あのとき」のことに一つの区切りをつける時が来たと判断した。
そして
奇妙なうわさが広がり始めた。
人が消えるという
遺書もなく
争った形跡もなく
金品や貴重品にも手を付けた形跡すらなく
それどころか
ついさっきすれ違ったという事例すら報告された。
消える場所もばらばら
消える時間もばらばら
そしてついに、
その噂は二人のもとへ
耳に入るのではなく、
その眼に入ることに。
台風の近づいているそんなある日、
診療所におじいさんがやってきた。
その老人は最近身体が動かないようになってきたと言った。
何でも万病に効く薬があるとかいうのを聞いた。
もしあったら譲ってもらえないだろうか。
そう訊いた。
そんなものはないよ。
兄は答えた。
ああないな。
弟も追随した。
そんな気の利いたものはこの世界に存在しないんだよ。
兄弟は告げた。
そんなものがあるなら僕ら医者はいらないし。
二人は老人に話す。
そんなものがあったなら僕等は医者にはなってない。
彼らは自分たちに聞かせるようにつぶやく。
その時―――
風が一際強く吹き
三人は木枠の窓から外に目をやった。
外を追い風に追われるように道を急ぐ少年たち。
学校帰りだろうか。
ふと、
老人の目が少年たちの後ろにあるものをとらえる。
あれは、
かぼちゃ。
だろうか。
かぼちゃと呼ぶには、
サイズは大きく。
それでも世界にはハロウィンで見られるように巨大なものもあるが
棘が生えており。
さすがに彼の長い人生においても見たことはない
何より色が。
半透明、朱、翠の三色が不規則に混じり合う不快な
それが。
風に乗って転がり。
少年たちに迫る。
老人が彼らに注意を喚起する間もなく。
それは一瞬で少年たちにぶつかり。
少年たちは
身体が瞬間で膨張し。
ぽん、と
はじけた。
目を疑った。
が、事態はそれで終わらず、
弾けたその場所。
そこに。
なにかあった
老人は自分の人生の中から必死でそれを説明する言葉を探す。
そう、あれは、
サボテンのような、アロエのようなとある植物
アロエの葉が丸くなり、上を向いて棘のある
そんな植物
どうかな?
老人の耳にその言葉が
日にちあいてすみません。
仕事忙しく・・・
短編で書こうとすると
たいていブラックな感じになる。
なんでだろ