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その2

薄曇りの朝だった。


二人は天候に感謝した。


いつまでかかるかわからない。

少しでも体力を温存できるのならそれに越したことはない。

もちろんそこまでは考えていなかった。


単にその前三日ほど暑い日が続いていたからだ。


二人は出かける前に少女のもとを訪れた。


いってくると。

すぐにもどると。

つぎはいっしょにどこかいこうと。


きをつけてと。

けがはしないでと。

たのしみにしてると。


窓から見える少女の顔がだんだん小さくなり―――


見えなくなっても二人はその場所を振り返り振り返り


そして前を向いた。


しばらく歩くことになるぞと、弟に告げる。

兄ちゃんよりは歩けると、兄を挑発する。


二人の歩みは時にはピクニックのように軽やかに。

時には断頭台へ向う死刑囚のように重く。


二人の希望と微かな諦念の行進は続いた。



四時間歩き―――


兄弟はその四時間をとても長く感じ、とても短く感じたが。


彼らはそれをついに見つけた。見つけてしまった。


見つけなければよかったのに。

だが、それも必然。


『あった!!』


見つけたのは同時。

どちらかが見逃してもどちらかが気づいていただろう。


サボテンのような、アロエのようなとある植物

アロエの葉が丸くなり、上を向いて棘のある

そんな植物


彼らは気づくべきだった。

よく調べておくべきだった。

せめて図鑑の写真を持ってくるべきだった。


そうしたら、いやそれでも気づかなかったのだろうか。

気づいてくれというのは傲慢なのだろうか。


少年たちが聞いた、図鑑で見たそれは棘がなく。

少年たちが見つけたそれには棘があるということに。



だが、彼らが気づくことはなく。

もちろんその場に止める者もなく。


二人は丁寧にスコップで掘り起し、それを包んで来た道を振り返った。


帰り道の歩みは天国にも昇れそうなほど軽やかに。

今日の戦果を少女にどう伝えるか楽しく話しながら。

疲れることなどなく往復七時間の冒険を終えた。


少女の家にたどり着き。

三人は笑顔で向かい合った。


二人は冒険譚を少女に面白おかしく伝え、

会ってもいない狼や熊を登場させ、

兄の勇敢さ、弟の機転でそれを乗り越え、

ようやく帰ってこれたんだと告げた。


少女は笑い、驚き、悲鳴を上げ、

二人が帰ってきたのを神に感謝した。


もしかしたら、

神に感謝するべきなのは

最後にその時間が与えられたことに対してなのかもしれない。


少女はそれに気づくこともなく。

兄弟もそれに気づくこともなく。


二人がとってきたその植物を煎じ、

小さなカップに入った液体を少女が口に含んで、

わずかな時間が経ち。



少女は夕焼けのなか、




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