転校生の名は‘しらぎくかなで’
「転校生、転校生! 転校生が来たよ!」
始業式が終わった直後、あたしはすぐさま、隣のクラスのジョン・クラウドに報告しに行った。
あたしの名前はルミ・オークナージャ。
ジョンとは幼馴染。ジョンは昔から動物が好きで、今も帽子の中で何かを飼っている面白い子。
ショートカットの髪を掻き上げて、ジョンに話すと、困ったような顔をされた。
あたしはお構い無しに続けた。
「し ら ぎ く か な で って言うんだって! 会いに行こうよ。ね?」
「うう〜ん……」
あまり乗り気でないジョンの腕を引っ張って、その子のいる教室に向かう。
っと、その前に……。
「啓汰!」
人混みの中に、その姿を見つけた。声に気付いた啓汰は手を挙げてこたえてくれた。
啓汰とは、魔法学校で知り合った一番の友達。そして、頼りになる存在。
「転校生の子、知ってる? 見た?」
「ああ、その子なら始業式前に会ったぞ? 迷ってたみたいだったから、案内したんだ」
「え~?! いいな、ずるーい!」
「ずるいって言われてもなぁ……」
啓汰は頭を掻いた。辺りをキョロキョロと見回し、指をさした。
「あの子だよ」
おさげ髪を揺らして歩いている少女がいた。まだ、周囲に馴染めていないように見える。
近くまで歩いてきた奏は、啓汰に気づき、ペコリと頭を下げた。
「いい子だね~」
おっとり口調でジョンが呟いた。