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隣の女

作者: Eisei3
掲載日:2026/01/18


 俺は、黒六白の黒豚だ。

 

 黒い体に、手足の先と鼻先、それにくるっと上に丸まった尻尾(しっぽ)の先が、白い毛で覆われている。

 だから、黒六白(くろろっぱく)マニア(専門家)は、俺たちをバークシャー(Berkshire)と呼ぶが。


 赤みを帯びたきめ細やかな肉質に、甘い風味の脂肪(あぶら)絡む(交雑する)

 だから、俺たちの肉は美味い。共喰いになるから、俺は食わないが。

 


 今日も俺は、小さな盆地の片隅にある養豚場近くの低貸しパチ屋で、いつものパチスロを打っていた。

 やはり、(わる)はスロット。俺は煙草を横っ咥えにしながら、二つに割れる(ひずめ)の指先にコインをはさみ、スロの投入口にコインを三枚投入する。そしておもむろに、黒いスタートレバーの丸い頭を弾く。


( チャリ、リッ… 、ガコッ、ブーン…)

 台枠の窓から覗くスロットの三本のリールが、僅かに小さく上下にぶれて跳ねる。そしてスッと、回転を始める。


 〖 ファン〇ー ジャ〇ラー 〗

 やっぱり、(わる)が打つのはジャ〇ラーだ。しかも真っ赤な、赤いG△G△ランプのイカレタ色が、グサッと! 脳みそに突き刺さるファン〇ー、さ!!

 俺の周りでも、目つきの悪い不良の年寄りたちが、千円札をじゃぶじゃぶと、コインサンドに突っ込んでいる。


 

 『 ガコッ!(ペカッ !)

 レバーを押し下げた瞬間、鮮やかな赤色に染まったG△G△ランプの文字が点灯する。

 「先ぺカか …」

 右リールの上段に、数字の7の赤い残像を狙って、右のストップボタンを右手の人差し指の先で押す。

 ( ズルッ … 。)

 赤い数字の7が、上段に止まらずに、上から滑ってきて下段に止まる。


 「ビック、か …」俺は、そう呟く。

 そして、左のリールの上段に7を止めると、中リールの中段に回転する赤い7の残像を狙い、真中のストップボタンを押す。

 スロットの窓枠の中に赤い7の数字が揃うと、軽快なビッグゲームの軽やかな音楽が鳴り響く。筐体(きょうたい)に散りばめられるカラフルな色彩のランプが、台が奏でる音楽に合わせ点滅を繰り返し、台は色鮮やかな七色のレインボーに輝く。

 

 俺はベットボタンを押すと、レバーを叩き、右のリールのストップボタンを押す。そして中リール、左リールと、順にボタンを押しゲームを消化してゆく。

( ジャラ、ジャラ、ジャラッ … )

 筐体の下皿に、ボタンを押し終えるたびに銀色のコインが吐き出されていく。



 ( うーん … )

 ビッグゲームを消化し終え、俺は天井に向かって腕を広げ、大きく伸びをする。

 白い煙草の箱から一本咥え抜くと、銀のジッポーを擦る。

 ( カチッ、ジッ シュボッ … )

 「ふーっ、…」

 

 「コーヒーでも飲むか … 」

 そう呟きながら、台の上の棚から休憩中であることを告げる札を取り、台のスタートレバーに引っ掛けた。

 台のベットボタンを押すと、レバーを叩きリールを回転させる。

 そしてスロットのリールをから回しにしたまま、俺は休憩コーナーへと、ブラックの缶コーヒーを買いに向かった。



 

◇◆◇◆◇…




 俺の隣の台では、むちむちした身体つきをした、色白の|大ヨークシャー《 Large White 》の若い女がずっと、やはりジャ〇ラーを打っていた。


 俺は、再びコインを三枚、コインの投入口に滑り込ませる。そしてレバーの黒い頭を押し下げ、右手の蹄の人差し指の先で、また黙々とストップボタンを押し続ける。


 「ん。…? 」


 隣に座る女は、俺の穿()いている白いスラックスの、俺の足元をちらちらと、チラ見してくる。そして時々、目を透かすようにして俺の横顔を窺っている。


 「ん。… 」

 視線に気づいて、俺がその女に顔を向けると、女は、慌てて俺から顔を自分のスロットに向け、背ける。


 俺は横目で、その女を注視する。自分のスロにコインを投入しながら。

 すると、女はまた、俺の足元に向け視線を泳がせる。

 「 ? 」

 女の顔は、心なし …  いや、頬も赤く、かなり上気している様に見える。

 それからも女は、俺をチラ見し続けている。


 「やっぱり、できる豚はモテるぜ!」

 俺は、一人でそう悦に入りながら、スロを打ち続ける。

 




 「 … は? 」

 (でも、何か、この(おんな)、興奮してねぇ… ゕ?)

 俺はやっと、その女の、違和感に気づく。



 「 () ()()、か⁈ 」

 俺は、自分の白いズボンの股間へと、視線を落とす。


 「 () ! 」


 果たして、そこには、ズボンのチャックに挟まれ、飛び出した()が一本。

 白いズボンの色を背景に、黒く、その存在を誇示していた。


 

 俺は、女の顔をまじまじと見つめる。

 女は目を丸くして、やはり俺の顔を見つめ返している。上気し切った目つきで。

 (気が付かれてしまったか …  の、様な顔つきで)


 「 … … … 」


 

 しばらく無言で見つめ合った後、

 俺は慌ててトイレへと向かった。




 


 ( おわり … )


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