どぶ川のマーメイドと、空飛ぶ確定申告
2025年12月16日、火曜日。午後8時1分。
大阪府豊中市の住宅街を、体長4メートルの「光り輝く巨大な納豆」が時速80キロで爆走していた。
「待て!止まれ!納税の義務から逃げるな!」
その後ろを追いかけるのは、最新型のプロペラを背負った税務署のドローン……ではなく、上半身がマッチョな中年男性、下半身が高級ブランドのモノグラム柄をした「ブランド人魚」の佐藤さん(52歳)だった。
「おい、そこの君!」
歩道を歩いていた大学生の田中は、呼び止められた。
見ると、自動販売機が二本足で立ち上がり、田中を問い詰めている。
「今すぐ、このQRコードを飲み込んでくれ。そうすれば君の脳内に、2026年分の『おせち料理』の全レシピが直接インストールされる」
しばらくの沈黙。
「いや、結構です」
田中が断ると、空から「全自動確定申告」と書かれた巨大な鉄球が降ってきた。
鉄球は地面に激突するすれすれの所で急停止し、中からタキシードを着たゴールデンレトリバーが現れた。
「失礼。計算が合わんのだ」
犬は渋い声で言った。
「なぜ、日本中のタピオカの粒を合計しても、私の初恋の思い出(3キロバイト)に届かないんだ? これでは来年度の予算が組めない」
「知りませんよ」
田中は冷静に返した。
その時、爆走していた巨大納豆が急ブレーキをかけた。
中から出てきたのは、豊中市長……ではなく、市長の影武者として雇われた「感情を持ったスマート炊飯器」だった。
「皆さん、落ち着いてください!」
炊飯器は蒸気を吹き上げながら叫んだ。
「今、月面から届いた最新のニュースです! 2025年の終わりを待たずして、重力が『サブスク制』になります。月額980円を払わない方は、今すぐ成層圏まで浮いていってもらいます!」
その瞬間、街中の電柱がリズミカルに踊り出し、空の色が「ネオンピンク」から「おばあちゃんの家にある古いタンスの色」へと変わった。
田中は空を見上げ、浮き上がり始めた足元を眺めながら思った。
「ああ、やっぱり火曜日の夜に、知らないおじさんから『宇宙の裏地』を買い取るんじゃなかったな」
遠くで、ブランド人魚の佐藤さんが「領収書が……鱗になっちゃった……」と泣き崩れる声が響いていた。




