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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ナム・サンダー!~一休さん転生FINAL(スピンオフ・石田三成編)~

作者: 吉村吉久

 マリスブルグの比較的治安の良いエリアにある教会では、今日も一休が朝からほうきを持って掃除に励んでいた。

 一休の頭はすっかり禿げ上がっているが、励むと禿げるを掛けてもいなければ、それを気にしている余裕はない。訳あって教会に転がり込んでいるうえ、彼はこの転生が最後であることを知っている。


 ちなみに顔はイケメンである。


 シスター・メリヴィアは欠伸をしながら屋外へと出てくる。修道服がダボダボで、鏡を見ている暇もなかったのだろう。


「イッキュウさん、イッキュウさん。こんなに早くからどうしたんです? この時間帯は浮浪者すら寄ってきませんよ」

「あ、姉上あねうえ。おはようございます。何ゆえ、姉上が拙僧せっそうがこの時間を選んで掃除をしているか分かりませんか?」

 

 明らかに年上の一休にまだ20歳なのに姉上シスターと呼ばれるのを嫌がるメリヴィアはその事は気にせず、謎の問いかけにはっとなり、一休の顔をまじまじと見る。もはや眠気は完全に醒めていた。


「イッキュウさんが何かを企んでいる……これは私への挑戦。違いますか?」

「……さすがは姉上、良く拙僧を見ておられる。ではこの時間帯に掃除をすると大きな意味があるのは何故でしょう?」


 メリヴィアは塀に腰かけると、一休の僧服の袖を引っ張って、

「では、何か面白いお伽噺とぎばなしでも聞かせてください。その間に考えるとしましょう。イッキュウさんの話はいつも面白いんですもの」


 本当はそうでもない。退屈だから逆に考える時間があるというものだ。


(ほう、この罪深き小娘の眼は、退屈を紛らわせるために退屈な話を聞こうという魂胆だ……だが、それも悪くはない)


 一休は腹立たしいシスターへと向き直ると、指を立てて話し始めた。




……あれは、拙僧の憎きかたきである吉四六キッチョムが生まれる前あたりだったか、つまり拙僧が死んで100年後、いや、200年後ぐらいだったか? 

まぁ良い。この世界では仮に明日の出来事であっても悪くないだろう。


 拙僧が転生する前の世界、つまり日本ひのもとを二分する戦い「関ケ原の合戦」とやらが行われていた頃の話である。


 どうやら東軍の徳川家康の勢いがあり過ぎて、西軍の毛利もうり輝元てるもとが尻込みしてしまい、代わりに石田いしだ治部じぶ三成みつなりが総指揮官として担ぎ出され、彼がかねてより深き友の関係にあった大谷おおたに刑部ぎょうぶ吉継よしつぐの館に向かったときの話だ。


 大谷刑部は石田三成に言った。


「予想以上にらい病<ハンセン病のこと>が悪化しており、もはや我が命もあとわずかと思える。治部じぶ殿、申し訳ないが、合戦には参加できそうにない」

「そこを何とかならぬのだろうか? 私の知恵ではとても大府だいふ<徳川家康のこと>の軍勢に勝てる自信が持てぬ。数では負けてはおらぬが、誰が寝返るか、恐らくは家康の手勢の者からの声もかかっておるだろうよ」

「それならば……そこにいる坊主にでも聞いてみたらどうだろう? というより、既に合戦の準備を勝手に始めているようだが」

「何だと……?」


 そこに現れたのが、あのとき安国寺あんこくじ一球いっきゅうを名乗っていた拙僧だったのだ。


――


 かくして決戦の地――関ケ原には西軍10万、東軍10万を号する大兵力が集結しつつあった。


 家康の元に、火急を知らせる矢文やぶみが届く。その内容は


「大府殿、この戦、貴殿も決して楽ではないはず。余計な犠牲を出すよりも、一つ勝負をしないか? この英吉利イギリスより伝わった「野球ベースボール」とやらで勝負し、勝てば、負けた側は引き揚げる。それでいかがだろうか? 三成」


 家康も、急ぎ矢文を送る。


「石田治部殿、こちらも同じことを思っていた。望むところよ。ところでこちらの陣立スタメンを先に送る」




1(遊)井伊直政

2(中)黒田長政

3(二)福島正則

4(指)本多忠勝

5(捕)藤堂高虎

6(三)細川忠興

7(右)加藤嘉明

8(左)松平忠吉

9(一)山内一豊

投:池田輝政

控え

(中)織田有楽斎

(抑)田中吉政

榊原康政

加藤清正

監督:徳川家康



「どうじゃ! 綺羅星きらぼしのごとき陣営スタメンであろう。史上最強打線よ!」


家康はこれを送り込んで得意げになっていた。


だが、これは一球が両者に向けて仕組んだ罠であり、頓智とんちでもあった。


「さて、この布陣に対して三成めに何ができよう。足りぬならカルバリン砲で援護射撃も送ってやろうぞ。切腹用の干し柿も大量に用意してやるでな」

 すぐに伝令から三成の矢文が届き、そこには西軍の布陣スタメン

「な、なんじゃと……?!」

 



1(遊)宇喜多秀家

2(右)大谷(野)

3(三)島左近

4(一)島津義弘

5(左)大谷(投)

6(二)小西行長

7(中)平塚為広

8(指)大谷(指)

9(捕)石田三成

投:大谷

控え

大谷

長宗我部盛親

脇坂安治

大谷

小早川秀秋

監督:大谷



「この「大谷」という男は何なのだ? 刑部はもう病気で死んだはず……!」


 慌てふためく家康に、本多忠勝が励ます。


「そんなものはこの平八郎が全て吹き飛ばしてやりますよ。俺らの「個」ってやつを見せるときやと……思いますね!」

「……せ、せやな!」




結果

西 33-4 東




「アカン……」

あまりの結果に家康、思わず脱糞。

「大体あやつが一人でやってくれたな……あの「大谷」という男は何者だったのだ?!」




大谷の勝鬨ヒーローインタビュウ

「無理だと思わないことが一番大事」




――




「えぇと……つまりは西軍が勝ったということですか? 大谷吉継によって……」

「いや、この「大谷」というのは拙僧がこれまで生きた文献、いや見聞によれば、そこから400年後あたりの、大谷翔平の可能性が高いとかそうでないとか。いずれにせよ、真相は謎ですねぇ、ただ、この一休の影響で歴史が動いた可能性はあります。ちなみに拙僧はこの後すぐ処されて死にます」


「イッキュウさんは転生の能力をそんな面白味のないことに使ってしまったのですね」

 フゥ、とため息をついたシスター・メリヴィアは、予想以上に話が退屈であることにあきれ返っていた。


「おもしろき、こともなき世を、おもしろく……か。存外、難しいことですねぇ、姉上。ところで、答えは出ましたか?」


 通りに、ぼちぼち人が出るのを見て、メリヴィアは呟いた。


 マリスブルグでは人があちこちにごみを捨てるため、朝を迎えてしまえば、掃除は終わりようがない。


「なるほど、掃除の時間を日の出の刻に済ませることで、余計なごみを見ずに済むということですね」


然様さよう、早起きはさんギットの得ですぞ、姉上……ふうぁぁ~、慌てず焦らず、一休、これから二度寝といきます。一休み、一休み……」


「イッキュウさん……ちょっと…… チィッ! またしても、やられたわ」




 本編に続く、続く……?!




 本編の前にスピンオフ、という書き出しからの開始、失礼します。


 長編連載予定、「一休さん転生FINAL」を投稿予定ですので、よろしければ読んでいってください。

 簡単に説明すると、何度も転生した一休さんがどんどん髪を減らして、最後に辿り着いたファンタジー世界で大暴れする、といった内容になるかと思います。


 待て、しかして希望せよ――!

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― 新着の感想 ―
奇想天外な展開に思わず笑ってしまいました。イケメンで天才肌な一休なのと彼がシスターのメリヴィアと繰り広げる軽妙なやり取りが読んでいてとても面白かったです笑 早朝に掃除をする理由を巡る二人の駆け引きは関…
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