表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/7

春:星冠の儀式

春が再び訪れ、ルナリス王立学園は1年の締めくくり、「星冠の儀式」を迎える。

これは、学生たちの功績を称え、卒業生や特別な発表を行う盛大な式典だ。

「星冠」は、ヴァルテリアの伝説に登場する、星の宝石が輝く冠。

愛と希望の象徴であり、ヴァルテリアの民を導く者に与えられるとされている。

将来有望な生徒に星冠を付し、学園の未来を祝福するのが、この儀式のハイライトだ。


大聖堂の尖塔は朝陽を浴びて輝き、ステンドグラスから差し込む光が堂内に虹色のモザイクを投じる。

空気には咲き始めた星花の甘い香りと、祭壇に供えられたローズマリーの清涼な匂いが漂う。

石造りの床は磨き上げられ、足音が荘厳に響く。

講堂の観客席には、生徒たちやその家族が集まり、期待と祝福のざわめきで満たされていた。



儀式の司会を務める学園長が、荘厳な声で式を進行する。

「ルナリス王立学園の誇る生徒たちよ、君たちの努力と情熱が、このヴァルテリアの未来を照らす。本日、星冠の儀式において、功績を称え、新たな一歩を祝福する」

会場は静まり、観客の息遣いだけが響く。


そして、いよいよ最優秀生の発表だ。


「エリス・フローレル。

平民の出自ながら、詩と歴史の才で学園を輝かせ、友愛と勇気で皆を導いた。

最優秀生として、星冠を授ける」


会場が拍手で沸き、エリスの頬に幸福な赤みが差す。

彼女の詩集『四つの光』は、外国での翻訳出版が決定し、エリスの名は国境を越えて響いた。

彼女は祭壇に上がり、王太子であるレオンから星冠を受け取る。


レオンが星冠をエリスの頭に載せると、エリスが正面を向いて高らかに言う。


「この星冠は、かけがえのない人たちと過ごした時間のおかげです。

ルナリスでの日々は、私の宝物です」


観客は再び拍手を送る。


拍手が静まる中、レオン、シルヴィオ、カイ、ガイルが祭壇に進み出る。

彼らがエリスの周りに立つと、会場は息をのむ静寂に包まれ、観客の視線が五人に集中する。

エリスは予想される四人の動きに、胸が高鳴る。


レオンがエリスの肩を抱き、突然声を張り上げた。


「クラリス・ラルティス、君の罪をここで明らかにする!」


彼の声は冷たく、講堂を静寂が支配した。

学生たちの視線がクラリスへと向かう。

金髪を高く結い、紫のドレスに瑠璃の装飾を輝かせるクラリスは、壇下で瑠璃会の女生徒たちと共に立っていた。

彼女の紫の瞳は驚愕と憎悪で揺れ、唇が震えた。


「クラリス・ラルティス、君は聖夜祭の夜、エリス・フローレルを毒殺しようとした。

瑠璃会のメンバーとともに、卑劣な陰謀を企てた」


彼はクラリスの筆跡で書かれた毒殺計画の指示書を高く掲げた。


「この書簡は、君がエリスの紅茶に『月影の雫』を混ぜ、病死に見せかけて殺害する計画を記したものだ。」


会場はどよめきに包まれた。

クラリスは顔を青ざめさせる。

「それは偽物よ」と叫んだが、シルヴィオが壇上に進み出た。

「クラリス、君の筆跡を兄の私が間違えるわけがない。」

カイが妖しく笑いながら加わった。

「『月影の雫』の入手ルートもわかってるよ」

ガイルは「お前の汚い企みは、許されるものじゃない」と叫んだ。


「クラリス・ラルティスの嫉妬と悪意は、学園の精神を汚した。

私、レオン・ヴァルテリアは、クラリスとの婚約を破棄することを宣言する。

そして、クラリスには、王立学園からの退学と、辺境への追放を命じる」



王太子レオンの言葉は重く、クラリスは顔を真っ青にして崩れ落ちる。

彼女はエリスを睨み、「あなたさえいなければ」と叫び、つかみかかろうとするが、衛兵に連れ去られていった。


レオンは観衆に向き直り、深呼吸をする。

そして、エリスの手を取り、広場の中央に彼女を導く。


「皆に告げる。

エリス・フローレルは、平民の出自を超え、ヴァルテリアの未来を照らす星だ。

彼女は私たちの心を奪い、私たちの人生を共にする者だ」


4人の男がエリスの前に片膝をつき、星の紋章が刻まれた4つの指輪を差し出す。


「エリス、僕たちと結婚してほしい。

君と共に、ヴァルテリアを愛と希望の国にしたい」


エリスは四人の同時プロポーズに心臓が跳ね上がり、両手を胸に当てる。

星冠が彼女の頭で輝き、桜色のドレスが春の日差しに映える。

彼女は4つの指輪を左手の指にすべて重ね、会場に響く声で答えた。


「レオン、シルヴィオ、カイ、ガイル、あなたたちの愛は私の宝よ。

プロポーズ、全部受け入れる。

これからも、ずっとみんなで仲良くしましょう」


彼女の言葉は大胆でまっすぐな言葉は、広場を動揺とざわめきで満たした。

エリスは4つの指輪をつけた左手の甲を会場に向け、芸能人の金屏風前ポーズをとって微笑んだ。




星冠の儀式から、エリスの生活が変わった。

エリスが王太子と有力貴族の令息たちからのプロポーズを受け、クラリスが退学になったことで、瑠璃会の力も弱まり、嫌がらせを受けることもなくなった。

ヴァルテリアの法では多夫一妻は認められていないが、王太子レオンを中心に議会に働きかけていることは、学園のみならず、民の知るところにまでなった。




朝の講義が始まる前、エリスは噴水の前のベンチで詩のノートを広げている。

そよ風が星花の花びらを運び、彼女の髪に軽く絡まる。

レオンが現れ、エリスの隣に座る。

「エリス、朝から詩か?」

彼はエリスの肩にそっと手を置く。

「見て、星花がキラキラしてる」

エリスは笑顔で彼の手に自分の手を重ね、柔らかな感触と彼の鼓動に心を弾ませる。


シルヴィオが生徒会室から出てきて、エリスを見つける。

「エリス、講義の前に資料を整理していたが、君の笑顔を見ると仕事が霞むな」

彼はエリスのノートを覗き込み、彼女の肩に軽く触れる。

「シルヴィオ、いつも忙しそうだけど、無理しないでね」

エリスはシルヴィオの手の甲に頬を摺り寄せる。


カイが木陰から現れる。

「エリス、こんな朝に君を見つけるなんてついてるな。まるで星花の魔法だな」

カイはエリスの髪に星花の花びらを挟み、甘い香りに目を細める。

エリスは笑い、カイの器用な指先にキスをする。


ガイルが剣術の訓練場から走ってくる。

赤茶髪が春風に揺れ、たくましい笑顔が輝く。

「エリス、朝練終わったぜ、一緒に講義行こう」

彼はエリスの手を握り、力強い掌の熱が彼女の指に伝わる。

ガイルの汗と革の剣帯の匂いが混じり、エリスは彼の情熱に心を弾ませる。

「うん、一緒に行こ」

エリスはガイルのたくましい腕に腕を絡め、肩に軽く頭を預け、笑顔を広げる。



放課後は、エリスと4人は学園の森でピクニックを楽しむ。

星花の木の下に毛布を広げ、焼き菓子の甘い香りとハーブティーの清涼な匂いが漂う。

エリスは4人の間に座り、彼らの愛に包まれる。

レオンはエリスの肩にマントをかけてやり、彼女の温もりと花の香りに心を奪われる。

シルヴィオはエリスに詩を朗読し、彼女の反応を愛おしげに見つめる。

カイはエリスの隣で寝転び、彼女の髪に星花を編み込む。

ガイルはエリスの口元に「あ~ん」と焼き菓子を差し出し、彼女の笑顔に目を細める。


エリスは4人の愛に包まれ、緑の瞳を輝かせる。

「みんな、大好き」

彼女の笑顔は、ヴァルテリアの春に咲く星花のように輝いていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ