夏:星空観察会
ルナリス王立学園の夏は、青春のざわめきに満ちていた。
それは、夏の終わりに開催される「星空観察会」だ。
学園の丘陵に広がる天文台が開放され、学生たちが望遠鏡を覗き、星座の物語を語り合う夜。
エリスは、学園の庭園に立ち、夕暮れの空を見上げていた。
天文台への道を歩くエリスは、ふと足を止める。
庭園の噴水広場で、4人の青年が彼女を待っていた。
レオン、シルヴィオ、カイ、ガイル、それぞれの視線がエリスに注がれ、こころなしか熱を帯びているように感じる。
「エリス、星空観察会には興味があるか?」
最初に口を開いたのはレオンだった。
金髪が夕陽に燃えるように輝き、青い瞳は穏やかだが、彼女を絡め取るような光を宿す。
「天文台の望遠鏡で、ヴァルテリアの守護星を見せたい。」
彼の声は柔らかく、甘い誘惑のようにエリスの心を揺さぶった。
「エリス、星を見るなら知識が必要だ。」
シルヴィオが冷ややかに割り込む。
銀髪が月光にきらめき、紫の瞳がメガネの奥で鋭く光る。
「天文台の星図は僕が完璧に把握している。有意義な時間を過ごそう」
彼の言葉は厳格だが、視線はエリスの唇を一瞬捉え、隠れた情熱を覗かせた。
「星空か。君の瞳に映る夜は、どんな輝きだろうね。」
カイが妖艶な微笑を浮かべ、黒髪を揺らして近づく。
「天文台の屋上で、二人きりで星の物語を囁き合いたいな。」
彼の声は甘く、危険な誘惑が漂っていた。
「エリス、俺と星見ようぜ」
ガイルが無邪気に誘う。
赤茶髪が揺れ、たくましい体格が夕陽に映える。
「天文台の丘で寝転がって、流れ星探すの、めっちゃ楽しいって。 」
彼の笑顔は純粋だが、熱い視線はエリスを強く求めていた。
ゲームの中で、エリスは誰か一人を選んで星空を共有する。
そして、その選択は、これからの特定ルートが確定することを意味していた。
しかし、エリスはここでもゲームの選択肢になかった選択をする。
「 星空観察会、すっごく楽しみ。 でも、私、選べないよ。」
少しあざとく首をかしげ、ピンクブロンドの髪を夕風に揺らしながら上目遣いで続けた。
「みんなで一緒に星空見たいな。だめかな」
内心ドキドキしながら反応を待つ。
四人は一瞬、互いに視線を交わし、微妙な緊張感が走った。
レオンが最初に微笑み、優雅に言う。
「エリス、みんなで星を共有するなんて、君らしいね」
シルヴィオはメガネを押し上げ、冷ややかに笑った。
「欲張りな選択だが、君なら許せる」
カイは金の瞳を細め、と囁く。
「君が中心なら、どんな夜も輝くよ」
ガイルは、いつものはじけるような笑顔で答えた。
「いいぜ。おれは、 エリスがいれば」
エリスは四人の反応に内心でガッツポーズ。
(ゲームにない展開、 逆ハーレム・ルート、いけそうな気がする)
彼女は明るく言った。
「じゃあ、決まり。 天文台、みんなで行こう」
天文台への道は、丘陵の緩やかな坂を登る小径だった。
天文台は石造りの円形の建物で、屋上のドームが開き、巨大な望遠鏡が星空を覗いていた。
学生たちがランタンの光の下で星図を広げ、芝生に寝転んで星座を指さし、恋人たちが囁き合っている。
エリスたちは屋上の静かな一角に大きな毛毯を敷き、シルヴィオが持ってきた星図を広げた。
月光が彼らの顔を照らし、夜風がエリスのピンクブロンドの髪をそっと撫でるた。
まるでハーレムの中心にいるかのように、四人の青年がエリスを取り囲み、熱い誘惑を繰り広げる。
レオンは望遠鏡を調整し、エリスに優雅に微笑む。
「エリス、ほらこれを見てごらん。あれが、ヴァルテリアの守護星だよ」
彼は望遠鏡を覗き込むエリスを背後からそっと彼女を抱え込むように密着した。
レオンの広い胸がエリスの背中に当たり、温かい腕が彼女の肩を包んだ。
(い、いい匂いがする)
エリスが望遠鏡を覗くと、青白く瞬く守護星が視界に飛び込んでくる。
「レオン、なんて綺麗なの」
彼女は目を輝かせ、彼の腕の熱に頬が熱くなった。
レオンはエリスの肩に顎を乗せ、耳元で囁いた。
「エリス、二人きりで夜空を独占できたら、よかったのに」
レオンの吐息が首筋をくすぐり、エリスの心は甘く締め付けられる。
(ひーーー、何、これ。幸せすぎる)
エリスはレオンに甘い微笑みを向け、貪欲にその温もりを味わった。
シルヴィオは星図を手に、毛毯の上でエリスにぴったりと寄り添った。
「天鷲座。神話では、英雄を天に導く使者だ。」
彼はエリスに星図を差し出し、紫の瞳で彼女を捕らえた。
シルヴィオの腕がエリスの腕に密着し、銀髪が月光に揺れて彼女の頬をかすめた。
「君なら、この星の物語をどう紡ぐのかな」
彼は顔を近づけ、吐息がエリスの耳にかかる。
「天鷲座、まるで、誰かを守るために輝いてるみたい」
エリスはシルヴィオにそっと身を寄せる。
シルヴィオの耳が赤くなり、紫の瞳が揺れた。
「君の解釈は、僕の心を掻き乱す」
エリスはシルヴィオの肩に頭を預け、貪欲にその親密さを堪能した。
夜風が少し冷たくなり、エリスが小さくくしゃみをすると、カイが妖艶な微笑で反応した。
「エリス、寒いなら、こうすればいい」
彼はエリスを自分の膝の上に座らせ、しっかりと抱きしめた。
カイの腕がエリスの腰を包み、背中がカインの胸に密着して温かい。
「星の物語なら、恋の神話がいいな。恋人たちが星座になった恋の話」
カイはエリスの首筋に唇を寄せた。
「二人きりになったら、秘密の恋の話を聞かせてあげるよ」
彼の吐息が耳をくすぐる。
エリスはカイの腕の熱と抱擁に興奮し、その甘さを貪欲に味わった。
ガイルは毛毯に寝転がり、エリスの腕を引っ張って隣に寝かせた。
「エリス、流れ星探そうぜ」
エリスの頭の下に自分の腕を滑り込ませ、腕枕をする。
ガイルの体温が近く、たくましい腕がエリスの肩を温かく抱いた。
赤茶髪が月光に揺れ、情熱的な笑顔が彼女の顔のすぐそばで輝いた。
「エリスとこうやって星見てるの、なんか、いいな」
エリスはガイルの無邪気さに心が温まり、腕枕に身を預けて空を見上げた。
「流れ星、見つかるかな」
彼女が笑うと、流れ星が光った。
「見えた! ガイル、すごい!」
エリスは思わず彼の胸にしがみついた。
「エリスを見てたら見逃しちゃったよ。また流れないかな」
エリスはガイルの腕枕の温もりと顔の近さに興奮し、そのまっすぐな好意を貪欲に堪能した。
「みんな、こんな素敵な夜をありがとう。わたし、すごく幸せ」
ウソ偽りないエリスの魂からの叫びだった。
エリスは四人に甘い視線を振りまき、貪欲にこのハーレム状態の興奮と幸せを堪能し、喜びに震えた。
エリスが四人と濃密で親密な時間を過ごす姿は、天文台の他の学生たちの注目を独占し、特にクラリス率いる瑠璃会の女生徒たちの嫉妬をすさまじいものに変えた。
屋上の端で星図を広げる女生徒たちが、怒りと羨望に震える声で囁き合う。
「平民のくせに、なんでエリスがあんなに親密にされてるの? 許せない!」
「レオン様があんな風にかいがいしく世話を焼くなんて。エリス、なんて厚かましいの!」
「カイ様に膝の上に乗るなんて、ふしだらすぎるわ!」
「シルヴィオ様があんな近くで囁くなんて、信じられない!」
「ガイル様の腕枕、なんでエリスなんかに。 絶対許さないわ!」
彼女たちの目は憎悪に燃え、手元の星図を握り潰す者までいた。
エリスはそんな刺すような視線に気づき、クラリスたちの嫌がらせを思い出すが、
(この幸せと引き換えなら安いもの)
と、甘んじて受け流すことにした。




