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斜陰  作者:
7/7

理想主義

 資本主義って嫌いだな、と思いながら過ごしている。

 それは金が価値観の中心にある人間を増やすからだ。

 情報商材を売ってなりあがった程度で偉そうに自分の哲学を語る人間なんてものが存在するのは資本主義でしかありえない。そいつに賛同する人間もまた馬鹿なんだと思う。金や財産への憧れによってしか前に進めないのかと失望させられる。


 かといって社会主義、共産主義も嫌いなのである。

 彼らは優しさを理想とするが、手段には暴力を好む。優しさを作り出すために被害者を作り出し、敵を作り出し、支配しようとする。だから失敗するのだ。

 ちょっとあこがれるだけならわかるが、歴史の失敗を見ていまだ社会主義や共産主義に傾倒する人々はバカなんだと思う。


 ここに共通するのは、知性を持たない人間への絶望である。

 俺は人生において少なからず知性に対して憧れを持って生きてきた。もっと賢くなりたいと思い、自分の頭の悪さにときに消沈し、ときに全てをサボりながら、それでも未だ、人類の知恵や歴史や技術の発展を知るたびに胸が熱くなる。全ての人間が知性に向かって歩みを進めていくのは当然のことだと心のどこかで思いながら、数十年生きてきたのである。


 知性とは限りない客観だ。物事を多角的に見て、真実を知ることだ。


 しかし現実はどうだろうか。

 世界は主観を奨励している。「私はこう思う」をあまりに尊重している。本当の弱者から目を背けながら、弱者を救おうと嘯いている。


 日本の問題点をあげてみよう。米が高い。ガソリンが高い。税金も社会保険料も高い。衣食住に窮している人はたくさんいるだろう。少子高齢化が進んでいる。年金は実質破綻している。台湾有事が起きた際に日本が介入した場合、中国は日本に核を落とすと宣言している。アメリカからの関税は馬鹿げた金額だ。食料自給率が低いから輸入のルートは考えなくてはならない。しかし農家は減っている。外国人に土地を買われている。治安の悪化は深刻だ。

 そんなとき与党と野党がそろって議論を進める政策はこちら。


「夫婦別姓」。これを実現すると結婚しても別の姓でいられます。


 国をあげた偽善である。これが絶望でなくてなんだというのだ。



 欲望という醜いエンジンを隠そうとしない資本主義の支持者は気持ち悪いが、偽善のリベラルに傾倒する多くの共産主義者たちも嫌いだ。なぜなのかはよく分からないが共産主義者は多様性という言葉が大好きだ。


 俺は多様性という主観を好まない。なぜならば主観だからである。そこに真実はない。

 例えばLGBTとは精神の主観の話である。LGBは性的志向のことだから主観に全てが存在するが、Tはそうはいかない。

「私は女性である」という男性をどこまで認めるべきか。これは人の主観をどこまで認めるべきか、ということにつながる。


 この「主観によって世界の秩序を変えてしまおう」というのが現代の流れのひとつなわけだが、全く持ってバカバカしい話である。

 優しさや配慮はコミュニティのなかで完結すべきで、憲法や法律に取り入れるべきではない。なぜならば憲法や法律はあくまで国家の維持のために存在するべきだからだ。1億2千万人すべてに配慮する憲法を作るには、少なくとも1億2千万条の憲法が必要だ。そんなことは不可能である。

 そもそも、どうやって他人の主観を完璧に知り、さらには言語化することができるというんだ。誰かの主観が次の瞬間に変わらないと言えるのか? そんなことは絶対にできやしない。


 本当に抑圧されている人間は声をあげることすらできない。それはチベットやウイグルがそうだ。ウクライナやロシアの一般人たちがそうだ。ガザやハマスの人々がそうだ。しかし偽善者たちはそこに切り込まないで、しょうもない主観の話を繰り広げる。


「海外では別姓が主流だから同姓の日本は不便を強いられる」。外務省によるとこんな事実は確認されていないらしいが、この主張の解決のためには法律を変える以外にも対処法がある。

 結婚しなければいい。配偶者に姓を変えてもらえばいい。他国に帰化すればいい。日本にいればいい。海外とやらが認識を改めればいい。選択肢は数多くある。日本の法改正を選ばなければいけない理由とは? 制度の破壊によるグローバリストたちの侵略が目に見える。


 自分を弱者と主張する人間が嫌いだ。主観はいくらでも歪むのに、主観を押し通そうとするからだ。

 すべての人間は強者になるべく努力をすべきなんだ。知性に向かって歩み、倫理に袖を通し、歴史を忘れず、自分と他人が違うということを知るべきだ。

 それは人間として成長するということだ。金を稼ぐことじゃない。優しさを強制することじゃない。

 

 俺は理想主義者なんだろう。俺の目指す世界にならないことは分かっている。全ての人間が知性に憧れるわけじゃないからだ。この世には知性の存在を知らない人間もいるんだから。

 でもせめて、そう願う人間がいることだけでも俺は誰かに知ってほしい。

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