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第86話 魔族の怒り

 魔王国連合内、中央街にて。


 中央街に有る屋敷の会議室には、中央魔族長のオーツが苛立たしげ机に備え付けられた椅子に座っていた。


 他の椅子には、西魔族長のアルファと北魔族長のガンマも神妙な顔で座っている。


 会議室に魔方陣が突如として現れ、其処からは南魔族長シグマが出現し大きく背伸びをしていた。 他の魔族よりも細く長い山羊の様な角が魔法ランプに照らされ輝く。


 「ふぅ~、あらぁお待たせしたかしら? ようやく、治療に目処が付いたわよぉ」


 南魔族長シグマは、美しい紫の長髪を靡かせスリットの入った髪と同じ色のドレスを身に付けた美女である。 しかし、今は長時間に及ぶ治療にあたっていた為、疲れた顔をしていた。


 「ご苦労だったなシグマ。 ……して、ベータは助かりそうなのか?」


 シグマにそう問い掛けたのは、魔族長を束ねる中央魔族長オーツであった。

 

 オーツは金髪の髪に白色のローブを身に付け、灰色の肌に盛り上がった筋肉が特徴の魔族だ。 オーツの角は太く鋭い先端を持つ逞しい角である。 


 「えぇ、何とかなったわオーツ。 もし、トール殿が希少な治癒の葉を磨り潰した薬をベータに持たせて無かったら死んでたわぁ」


 「でー? ベータからは、何か聞けたのー?」 


 気だるそうに話すのは、西魔族長アルファである。 青色の短髪で灰色の肌をしており、だらしないダボダボの服を着ていた。 アルファの角はやる気なさげに下向きの角が生えている。


 生来、いつも怠そうにしているアルファだが、友人で有り同胞のベータが死にかけで戻って来た時には誰よりも焦り怒っていた友情に熱い魔族だ。


 「ひゃひゃひゃ、そう急くなアルファ。 ベータが生き残った。 今は、それで良いじゃろう」


 老婆の様に笑っているのは北魔族長のガンマだ。喋り方は老婆の様だが、その見た目は小柄な少女にしか見えない。 真っ赤な髪に、真っ白な透き通る様な肌。 そして、可愛らしげにちょこんと生えた角が何とも愛らしい。 余談だが、北街では美少女として民から絶大の人気を誇る。


 「はー? 何? もしかして、ガンマちゃんは日和見なのー?」


 「こりゃ、アルファ。 同年代をちゃん付けするのはやめい。 日和見何てする訳なかろう、ひゃひゃひゃ必ず報いを受けさせてやるわい」


 「はっ、ならいいよー。 で? オーツ、どうなの?」


 「ふん、言われなくても分かっている。 シグマ、何か聞けたか?」


 「えぇ、勿論。 でも、あまり良い話しじゃないわよぉ?」


 「ベータが瀕死で戻って来ただけで良い話しじゃないじゃろ? さっさと言うのじゃ」


 「はいはい、まずはトール殿は死んだそうよぉ? ベータも最後まで見届けた訳じゃないそうだけどぉ、間違い無いそうよぉ?」


 会議室に衝撃が走った。


 同胞のベータが瀕死で転移して来た時点で只事では無いと思っていたが、まさか亜人の英雄にして元魔戦将軍のトールが死ぬとは思っていなかったのだ。


 「な……あり得ん! トール殿は今の亜人の中では最強に入るのだぞ!? いったい誰にベータ達は襲われたのだ!」


 オーツが目の前の机を力任せに叩くと、机は粉々に砕け散った。


 「落ち着いて、オーツ。 驚くのはまだ早いわよぉ? 魔族以外の亜人国が全て裏切ったのよぉ。 ベータ曰く、亜人達を率いていた獣人の馬鹿王子は、トール殿は大罪人で魔王の生まれ変わりの女の子を匿ってるから殺すと宣っていたそうね」


 「はぁー?! 亜人国が全部裏切ったー!? え? 魔王様、女の子になってるの?」


 「ひゃひゃひゃ、アルファお主も落ち着くのじゃ。 トール殿の孫は魔王様の生まれ変わりでは無いと去年話したじゃろう。 して、トール殿を殺したのは何処の亜人国じゃ? 私が火の海にして来てやるわい!」


 ガンマの手から密度の高い火球が現れ、周囲を照らす。


 「だからぁ、落ち着きなさい。 トール殿が、今の亜人達で殺せる訳無いじゃない。 殺したのは勇者よぉ、人間の国でまた召喚したようねぇ」


 シグマが言い終えたと同時に会議室の机が全て砕け散り、もたれ掛かっていたアルファは床に落ちた。


 殺気だけで机を砕いたのは、中央魔族長オーツだ。


 灰色の肌でも分かる程に、血管が浮き出ている。


 「ふー、ふー、ふー、勇者だとぉっ!? また、人間どもはあの悲惨な歴史を繰り返すつもりなのかっ!」


 怒りのあまり、会議室の壁が軋みひび割れ始めた。


 「オーツ……まだ話しには続きが有るのぉ。 息子夫婦も、孫のクウネルちゃんも恐らく殺されてるそうよぉ。 ベータからトール殿の最後の願いを伝えられたわぁ。 全部捨てて逃げろ儂の仇を打つ必要無し。 だってぇっ! ふざけてるわよねぇっ!」


 シグマの体から紫色の魔力が湧き出た。 それはドロドロとした怒りの魔力で周囲を飲み込みそうな闇そのものだ。


 「ねー? オーツ、どうする? トール殿の遺言聞いて逃げるー? それとも、最後まで戦う?」


 アルファはのんびりとした口調ながらもキレているのだろう。 アルファの背後には棘の様に鋭くなった水の魔力が犇めいている。


 「無論だっ!! 恩人を裏切った亜人国も、人間共も! 勇者も決して許さんっ! 全ての民達に伝えよ、戦の準備だ! どんなに劣勢であろうと、我等魔族が逃げる事はあり得ん!」


 「ヒュ~、オッケー! 当たり前だよね~、東街にはベータが復帰するまで人を派遣しとくよー」


 「ふふ、魔族の底力見せてやるわぁ! 今度こそ勝つわよぉ!」


 「ひゃひゃひゃ、極炎の餌食にしてくれようぞ!」


 クウネルが長旅の準備をしている頃。


 数が圧倒的に少ない魔族達の滅亡を掛けた最後の戦争が始まろうとしていた。

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