第71話 仮の寝床建設
「グルル……ふむ、服か。 確かに、初めて会った時も何かを身に付けていたね」
モロは胃の中で見たクウネルが溶けかけの服を着ていた事を思い出し、頷く。
「うん、だから服が欲しいんだ。 さすがに、そろそろ恥ずかしい」
今は大き目の葉っぱで色々と隠しているが、流石に限界である。
「クゥン! よし、私に任せてくれ! よし皆、隠れ家に戻るぞ! アオーーーーーンッ!」
モロが遠吠えをすると、久し振りに満腹になった群れが集まる。 そして、隠れ家とやらに向かって走り出した。
モロと群れに付いて行く事、数十分。 クウネル基準だが、小さめの山に辿り着いた。 そして、その山の洞窟にモロ達は入る。
「小さくて私は入れないな~……結局、野宿かー」
モロは何やら急いでいた為、一目散に洞窟に消えて行った。 恐らく、クウネルが何か身に着けれる物を準備しに行ってくれたのだろう。
「仕方ない、服を楽しみにしてとりあえず寝床作るか~」
山から少し離れた場所の巨木を引き抜き集める。
「ふん! そりゃ! すごーい、めっちゃ簡単に抜けるー!」
根っ子と枝は手刀で叩き割り、丸太を製造した。 其処から更に手刀で切り揃える。
「てい! とりゃ! ギコギコはしません! スーーーーッ! っていうか、素手で丸太切れるって私本当にやばくね? 死んだ祖父より強くない? 私、もう最強じゃね?」
クウネルは自画自賛しながら丸太を切っていると、嫌な記憶が蘇ってきた。
「あ、いや違うな。 両親を殺した元クラスメイトの糞どもはもっと強い。 あの時感じた殺気や気配はとんでも無く強かったもんね。 くそ! ふん! てい! 」
クウネルは何故か突如として湧き上がる怒りに戸惑いながらも、作業を続ける。
「もし、復讐しに行くとしても今の強さでは返り討ちに合うだけだろうな。 必ず、必ずもっと強くなって殺してやる!!」
力が入り過ぎたせいで、丸太が粉々に砕けてしまった。
「あれ? ふ~……どうしたんだろ、ちょっと落ち着かないと……」
クウネルは深呼吸をし、湧き上がった怒りを鎮めた。 先程までのイライラは嘘の様に消え去りクウネルは首を傾げる。
「急になんだったんだろ。 まぁ、どのみちこの魔の森で生き抜いていくなら強いに越したことはないしね。 また、強い魔物に遭遇したら率先して食い殺そっと」
クウネルは前世の祖父に教えられた技術を思い出しながら切り揃えた丸太を組み立てた。
「ふん! よっ! そりゃ! お~、金槌要らずだね。 素手で丸太を地面に打てた。 ふー、囲いはこんなもんかな? さて、仮の寝床でも作りますか」
自慢の腕力で丸太を地面に刺していき、囲う様に刺したら次は地面に丸太を敷き詰める。 その上に、隙間が空かないように手刀で叩き切った枝を載せ、更に枝の上に大きめの葉っぱを乗せた。
「かんせーい! おぉ、前爺に教えられてから初めての建築にしては上出来じゃね?」
クウネルは微笑みながら建てた小屋へと入ってみる。
「何という事でしょう。 山の洞窟しか無かった物件の直ぐ側には、匠の手により巨木の丸太を惜しみ無く使用した見事な掘っ立て小屋が! って、誰の家が掘っ立て小屋じゃーい! 失礼な! 全く! 激おこプンプン丸ですよ!?」
独り言を叫んでいると、答えるように腹の虫が鳴り始めた。
「グギュルルルルー……。 あー、働いたらお腹減ったな。 喉も渇いたし、この辺に川とか無いかな?」
洞窟に向かってクウネルは叫ぶ。
「おーい! モロー? この辺に川とかあるかなー!」
「クゥン!?」「「「「キャインッ!」」」」
すると、洞窟の中から森狼達の悲鳴が聞こえ。 直ぐにモロが走って洞窟から出てきた。
「ガウッ!? びび、び、びっくりしたー! すまないがクウネル、もう少し小さな声で呼んでくれるかい? 群れの皆も驚くから」
「あー、中で声が反響したのね。 めんご、めんご! で、川とかある? 喉……渇いちゃって」
「クゥン? あぁ、水場だね。 あっちの方に行けば池が有るよ。 でも、魚以外にも肉食の魔物とか生息してるから気を付けてね。 クウネルなら心配要らないと思うけど」
「うん、大丈夫。ありがと、ちょっと行ってくるね」
「ガウッ! もう森は暗いから気をつけるんだよー?」
「ん、はいはーい」
モロに手を振りながら、教えてもらった方角へと進む。 ステータスが上がったからか、何かのスキルの恩恵か、暗くても視界が確保できる事にクウネルは喜んだ。
「へへ~、凄いな薄暗いけど全然見れるや。 これも飛竜王の恩恵なのかな?」
少し進んだ所で、後方からモロの大きな声が聞こえた。
「キャインッ!? いつの間にか隠れ家の側に巨大な掘っ立て小屋が!?」
「ぷっ、相変わらず反応おっっっそ!! あはは……って、誰の家が掘っ立て小屋じゃーい!
◆◇◆
「おー、本当にあった~! 池だー!」
あれから数十分進むと、大きな池が姿を現した。 今のクウネルでも、充分泳げる程の大きさだ。
「さて、流石に真っ暗になると何も見えないな。 仕方ない、キャンプファイヤーと洒落込もっか」
近くの巨木を引き抜き、丸太を製造し積んでゆく。
「よし、こんなもんでしょ。 ファイアー! 火炎!! ボァァアアッ!」
積んだ丸太は轟々と燃え盛り、池を眩しく照らす。 辺りはまるで昼間のように明るくなった。
「オッケー! さて、水水ー!」
池に近寄り、手で掬い上げた水を飲み干す。 巨大なクウネルが手で水を汲むと、それだけで池の水は揺らぎ大量の水が池から消えたことを表す。
「ゴクゴクゴクゴクッ! プハァーー! もう1杯、ゴクゴク! プッッッッハァァァーー!! あ~生き返ったー! 何日振りの水だったのだろうか、あ! スライム君を飲み物としたら数時間振りか」
クウネルは水分を接種し、一息ついた事で水面に浮かんだ自身の姿に気付く。
「ん? あれ? これって……」
水面に浮かんだ自分の顔を凝視し、見覚えの有る顔に首を傾げる。 そして、思い出した。
「あー! これ、前世の高校生の時の私じゃん!」




