第65話 これが私の新たな力……?
「熱い、熱い熱い熱い! 身体が焼ける!! ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
全身から煙を吹き出し、悶え苦しむクウネルの頭の中で声が聞こえた。
『ふふ、すごいすごい』
「ぁぁぁぁっ!? 誰っ? 違う……知ってる! この声は……」
『あぁ、私の可愛いクウ。 さすが、私のクウ。私が喰い殺しきれなかった飛竜を、こんな短期間で喰い殺せるなんて驚いた』
「……ぇ? 何の話し……? うぅぅっ! 熱い熱い熱い……。 貴方は……母なの?」
優しい声に絆されて、何故かクウネルは声の主に親愛すら抱き始めた。
『ええそうよ、私よクウ。 貴方の事が大好きなお母さんよ』
何かが頭に染み渡る感覚に襲われながらも、クウネルは母と名乗る声の主に会いたくて焦がれる。
「お母さ……ん? お母さんなの? 」
『そうよ、お母さんよクウ。 良く頑張ったね、えらいね』
「……うん、うん、私頑張ったよ。 お母さん」
褒められた事の無いクウネルは母に褒められ嬉しくて仕方が無い。 その事に違和感も無く、涙が頬を伝う。
『ふふふ、嬉しいわぁ。 ずっとお母さんって呼んで欲しかったの』
「お母さん、お母さん? ずっと……? うっ……熱い! 熱いよお母さん」
『あらあら、まだ苦しいのね。 可哀想に、お母さんが何とかしてあげるからね。 直ぐに楽になるわ。 あと、ご褒美もあげるわね……って、あら~? もう時間切れかしら?』
頭の中の声が遠退くのをクウネルは感じる。
「え……お母さん……? 何処に行くの……? ご褒美って……美味しい物……?」
遠のく意識の中、クウネルは確かに母の存在を心の中に感じる。
『ふふっ、きっと気に入ってくれるご褒美よ。 お母さんはいつも貴方の中にいるから寂しくない。 大丈夫、クウはもう大丈夫よ』
「ぅん……わかった。 私、頑張るから……諦めないから」
『えぇ、ちゃんと知ってるわよ。 私の可愛いクウ、またね』
「ん……またね。 お母さ……ん……」
クウネルは全身から煙を吹き出し続けながら意識を断った。
◆◇◆
暫くして、クウネルの意識は覚醒した。
「……はっ!? やばっ! 気絶してた?! どれぐらい? 何か夢を見てた……よね? お母さんの夢? あれ? ……お母さん?? ドクンッ! ――うぐっ!?」
クウネルは突如跳ねた心臓の鼓動に胸を押さえる。 身体が波打ち、身体が軋み始めた。
「あぐっ……あの滅茶苦茶身体が熱いのは夢じゃなかったの??」
大きく心臓が跳ねる度に、周囲が狭くなっている事に気付く。
「あ、これやばい! 私の身体が大きくなってんだ! どんどん狭くなってる、不味い不味い不味い!!」
クウネルは来た肉壁の道を掻き分け戻る。
「まだ胃には、友達のウルフキングが居るんだよ! 大丈夫、気配はまだ有る! 急げ!!」
飛竜王が死んだ事で隠密スキルが消えたのか、外にウルフクイーンの気配を感じ取れた。
「良かった、クイーンさんも無事か。 つて、今はそれ所じゃない! 早く早く!」
肉壁を急いで掻き分けるが、抵抗なく肉も骨も引き裂けることに驚愕する。
「すごい! ステータスが滅茶苦茶上がったのが分かる! 」
血が吹き出るのも構わずに、進んでいるとクウネルの身体が更に大きくなり肘が骨に引っ掛かり始めた。
「ぬぉぉぉぉ! 1度手を肉壁に入れたら、ギコギコはしません。 はい、スーーーーーー……って、馬鹿やってる場合じゃないよ私!! ネタが古い!」
骨を圧し折り、肉を千切り、進み続けようやく空けた穴まで戻る事が出来た。 そのまま胃の中に無理矢理顔を突っ込みフォレストウルフキングを探す。
「急げーー!! 何処だ?! あ、見えた!!」
クウネルはウルフキングが胃酸の海に落ち掛けているのを発見する。 飛竜が死んで倒れた時に、胃の向きが変わったのか今にも落ちそうだ。 ウルフキングは全ての足を使用不能になっていた為、逃げる事すら出来なかったのだろう。
少しづつウルフキングの身体はずり落ち、胃酸の海へと近付いていく。
「あかん! ダメダメダメダメ!! 間に合えぇぇぇぇぇぇっ!」
片腕を胃の中に突っ込み、落ちる寸前のウルフキングを受け止めた。
「セェーフ! ナイスキャッチ!! でも、友はピクリともしないやん! 早く此処を出て、治療しなきゃ。 ドクンッ!! ぐぇっ!? まだ身体大きくなるの!?」
更にクウネルの身体は巨大化し、頭と片腕が胃の中に入っている為身動きが取れない。
「不味い、胃から出れないぞ。 ……どうする、どうする私! あ、そうだ!」
ウルフキングを優しく手で握り、もう片方の手で胃の壁を引き裂く。 そして、そのまま胃の外へと向かって身体を捩じ込み進んだ。
「ウルフクイーンさんのいる方向へ切り裂いて行けば、外に出れる筈だ!」
肉壁や骨をどんどん裂いて進む。
「美味しそうなお肉! いや、今は我慢だ! 友達優先! ギュルルルルー……いや、友達優先だよ!! 何考えてるの!? 私のお腹!! 空気を読めぇぇぇぇぇ!!!」
渾身の力を振り絞り、遂に光が見える所まで出て来れた。
「メリメリ……ズパァァァァンッ! よっしゃぁ! 出れたぁ!!」
クウネルは飛竜の腹から這い出た。 手の中に握るウルフキングも無事の様だが、早く治療せねば直に死ぬだろう。
「グルルルル!? ガウッ!! ガウッガウッ!」
クウネルが飛び出た先は、ウルフクイーンの目の前だった。 巨大化したクウネルを見て威嚇している。
「あれ? ウルフクイーンさん、こんなに小さかったかな? あ、私が大きくなったのか! ……何だろう、サイズ的には普通の狼の大きさに見える。 私、どれだけ大きくなったの?」
全身血だらけのクウネルは自身の姿を確認しようとするが、今はそれ所では無い。
ウルフクイーンはクウネルの手の中に夫の気配を察知し、牙を剥き出しで怒り始めた。
「何でやねん! どう見ても、貴方の夫を助けた善巨人やん! 善巨人って何だ? 知らん! 言葉……わかる? 旦那さん、ピンチ」
クウネルはウルフクイーンにゆっくり喋り掛けながら、ウルフキングを地面に降ろす。 しかし、意識は既に無く、ピクリともしない。
「やばいな、治療しようにもやり方がわからん……ピンチ!」




